2018年8月3日金曜日

あの時はどうしたっけ? 過去の似た経験を思い出してもらう

20187月、今年度のネパールでの活動について(※1)、ソムニード・ネパール(※2と打ち合わせるため、半年ぶりにネパールへ行きました。
滞在中に、これからソムニード・ネパールが一緒に活動したいと考えている村(ここではG村とします)のオバチャンたちと話をする機会を作ってもらいました。このオバチャンたちは、ソムニード・ネパールが実施した研修に参加した人たち。自分たちなりにゴミの分別を始めていますが、資源回収業者に回収してもらうため、ガラス片や金属を持ち寄ることのできる、資源回収スペースを作りたいと口々に言ってきました。
でも、気になったのは、回収場所を作りたいとは言うものの、何世帯が利用して、どのくらいの量のガラス片や金属を溜めておける場所が必要なのか…という答えが出なかったことです。ということは、ソムニード・ネパールとのあいだでも、そういう話はしていないということ。まずはソムニード・ネパールとオバチャンたちがここを明らかにしないと、これ以上は何も進まない。回収場所なんて言うとなんだか具体的に聞こえますが、何も具体的ではない。
たとえば、「新しいパソコンが欲しい」と思っていても、画面の大きさは?カバンに入る大きさがいい?OSは?メモリは?メールと表計算ができれば十分?予算は?色は?などなど、どう使っていくのかを考えていかないと、どのパソコンを買うか決められませんよね。



そこで、次の日、ソムニード・ネパールのスタッフ、ディベンドラとのミーティングの機会をもちました。まずは私と、実際に現場でオバチャンとやり取りをする彼とのあいだで共通理解を作っておきたかったからです。

私:昨日、G村のオバチャンたちの話を聞いていて、気づいたことはありましたか?
ディベンドラ(以下D):あそこは昔の人たちと新しく移住してきた人たちのとの間での衝突があって・・・
(私の心の声:え?昨日そんな話題は出ていたっけ?)
まぁ、それは昨日の話には出てこなかったけどね。
(私の心の声:言いたかっただけ?)

やや暗雲立ち込めるスタートでしたが、気を取り直して

私:ええっと、私は、話を聞いていて、オバチャンたちは、どのくらいの大きさの回収場所が必要かを、まだ具体的に考えていないし、オバチャンたちの間でも共有してないように見えたんですよね。

そこから、ちょっと話の矛先を変えてみました。

私:ところで。ディベンドラさん、DEWATS(分散型排水処理施設、※3)建設の時は、どうしていたんですか?
D:?
私:設計図を作る前になにか調べていましたよね。それは何でしたか?
D:利用する予定の人の数や、各家庭から排出される排水量を調べましたね。
私:ですよね。あらかじめ、村にどのくらいの人がいて、どのくらいの排水量があって…を調べてからDEWATSの設計図を書いていましたよね。何のためでしたっけ。
D:これを調べておかないと、適切な大きさのDEWATSを割り出せないですよね。
私:そうですよね!じゃあ、ゴミ回収場所も同じじゃないですか?まず、“利用する予定の人数”からいきましょうか。どうやって調べていきます?
D:なるほど、じゃあ、世帯調査を…
と、DEWATS建設の経験を思い出しながら、1年間の活動を組み立てていきました。

ここで過去の活動の話―村の人たちと、ムラのミライとソムニード・ネパールで取り組んだDEWATS建設のことを話題に出したのは、『途上国の人々との話し方』(※4)にも解説されている「類似体験について聞いてみる」をやってみようとしたからでした。
これまでも、いろいろな場で「類似体験について聞いてみる」ことを試してみたものの、「それはそれ、これはこれ」と言われ、何度も撃沈しましたが(実は、前日のオバチャンとの会話でも試して失敗しています)、今回は、「ゴミ回収場所を作る」というボンヤリしたアイデアから、一歩進む突破口が少しは見えたんじゃないかなという気がしています。
ただ、こうしてやりとりを振り返ってみると、私から何でもかんでも言いすぎていて、本当は「DEWATSもゴミ回収場所も同じ」とディベンドラに言ってもらえれば、なお良かったのですが。

今やっていること、議論していることになんとなく行き詰ったなーという時、類似体験を思い出してみると、案外するっと突破口が見つかるかもしれません。

(ムラのミライ事務局長 田中十紀恵)

2 ソムニード・ネパール:ムラのミライがネパールで活動するときの現地パートナー団体。
3 DEWATS(分散型排水処理施設):自然の力を利用して家庭排水を浄化し、川に流す施設。詳しくはこちらをご覧ください→
「でこぼこ通信第12号」http://muranomirai.org/dekoboko-12
4 『途上国の人々との話し方』p.316 「③解決方法を探る:自己の類似体験の追跡にこだわる」

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