子どもが答えられることを聞く
ここから先は、前にお届けした<入門編~試しにやってみましょう~>の鉄則に従う形で、自分の子どもとのやり取りを意識的に振り返ることを、一度でもやってみた方のためのものです。
親子のやりとりに意識を向けてみると…
実際には、そんなことは今まで意識したことがなかった、という方が大半でしょう。親子のやり取りは、あまりに自然で日常的なことなので、いちいち意識することに違和感を抱かれた方もいらっしゃるかもしれません。
あるいは、意識しなくてもそれなりにうまく行っていると感じている方もおられるでしょうか。
「いやいや、親はうまく行っていると感じてるけど、子どもからすればどうなんだろう」、などと改めて思った方は、意識した甲斐があったというものです。
セクハラでもパワハラでも、ひどい場合は児童虐待でも、するほうとされるほうの感じ方、捉え方はずいぶん違っていることが、昨今では問題となっているではありませんか。
そのへんのことに少し気付いたとしたら、声掛けの方法を変えるチャンスです。
前にも書いたように、「なぜ〇〇しなかったの?しないの?」は質問の形を取った叱責であり詰問です。
子どもが萎縮したり反発するのは当然です。
あるいは、求められない助言や提案を唐突に行うのは、親の意見や価値観の押し付けに過ぎません。
詰問しないで、押しつけないで、子どもが答えやすい質問をする
話しは簡単です。
本当の質問にすればいいのです。
あるいは、求めているかどうかを確認したうえで提案すればいいのです。
そのためにもまずは確認の質問をしなければなりません。
質問に際して心がけるのはたったひとつ。
相手が答えやすい質問にする、ということ。
内容的にも心理的にも安心して、あるいは自信をもって答えられる質問をしてあげることが、親子のコミュニケーションをよくしていくために、最も大切な原則です。
子どもが答えにくい質問って?
逆に言えば、「なぜ〇〇しなかったの?」は、答えにくい質問の代表です。
子どももよくわからないのに親が聞いてくるから、つい言い訳してしまう。
「〇〇したらどう?」は、他に答えようがないので、いやいや「うん」と応じざるを得ない。つまり他に答えようがないのは質問ではありません。
また、あいまいな質問も答えにくいものです。
その代表格が「〇〇どう(だった)?」質問です。
「勉強どう?」と聞かれても何を答えればいいのかわからない子どもはつい「まあまあ」、「普通」、「微妙」とか答えるしかないのです。
答えやすい質問とそうでない質問を見分ける
折に触れては、お子さんに対して行った質問を思い出して、「あの質問を自分がされたら、どう答えただろうか、答えやすかっただろうか」
と立場を入れ替えて考えてみてください。
答えやすい質問とそうでない質問が見分けられるようになるはずです。
意見や考えを聞くのではなく、単純な事実を聞く
では、答えやすい質問とはどういうものでしょう。これまた単純です。
意見や考えではなく、単純な事実を聞けばいいのです。
「勉強頑張ってる?」ではなく、
「今日は何と何を何時間やったの?」。
「なぜ片付けなかったの?」ではなく、
「遊び終わったのはいつだったの?」という具合です。
「何?」「いつ?」「誰?」+過去形で聞く
つまり「何?」「いつ?」「誰?」などの単純な疑問詞を使いながら、過去形にして聞いて行くわけです。これが私たちの手法(メタファシリテーション)の基礎をなす事実質問の基本技術です。ただし、皆さんお気づきのように、唐突に、しかも、しかめっ面でこういう質問をすると、警察の尋問のように聞こえる恐れがあります。
ですから、まずは入門編(1,2をご覧ください)で示したように、プレッシャーをかけるような質問をしないことを心掛けることで、安心してやり取りできる雰囲気、あるいは関係を築くことが大切なわけです。
そうして関係が少しずつ変わってくれば、上記のような質問をしても素直に答えてくれるようになります。信じられないかもしれませんが、たくさんの実践事例で、このことは実証済みです。
次号は、ひとまず最終回です。
1から始まった「親子のコミュニケーションをよくするコツ」、たくさんのコメントをいただき、ありがとうございました。
皆さんからのコメントの行間に見え隠れするのが「子どもだけでなく、パートナーとの対話に使わないと!」のお声。次回の最終回は「実践編2~夫婦で練習してみる~」です。
(中田豊一 ムラのミライ 代表理事)