2016年8月30日火曜日

「あの研修のインパクト、あった?」がわかる、たったひとつの質問


皆さん常々お感じのことと思うのですが、事実質問の神髄は、講義だけではなかなか伝わりにくいものです。ですから、現場に行った際には、できるだけ自分でやってみせることにしています。
今回は、ミャンマーで活動している日本のNGOの現地スタッフに研修した際に行った、その手のデモンストレーションのひとつを紹介します。

そのNGOは、農村の女性たちを相手に母子保健についての研修を長年実施してきました。現地スタッフたちが、少し前に行った母子保健研修の参加者の家を訪ねて、研修のインパクトをモニターする現場に私が同行した際のことです。

彼らは、研修の内容を覚えていますか」、「その後実践してみましたか」など教わったばかりの事実質問を使って研修の効果を聞き出そうと努めるのですが、あいまいな答えや、こちらに迎合したような受け答えが多く、本当にインパクトがあったかどうか今一つはっきりしません。
そこで「じゃあ今度は私が少し聞いてみましょう」と、その家のお嫁さん(仮にAさんとする)に聞き始めました。

私「その研修には、一人で行きましたか?」
A「隣の人といっしょに行きました」
私「帰りもいっしょでしたか?」
A「はい、いっしょでした」
私「帰り道で、その人と研修のことについて何か話しをしましたか?」
A「いいえ、特に」
私「家に帰って何をしましたか?」
A「食事の準備を始めました」
私「家には誰がいましたか?」
A「夫と義母がいました」
私「研修のことについて何か聞かれましたか?」
A「いいえ」
私「あなたから何か話しましたか?」
A「いいえ」
私「他の誰かに話したりはしませんでしたか」
A「上の娘には、飲み水を清潔に保つ必要性について少し話しました」

同行した日本人スタッフのEさんはこのやり取りの意味がよくわかったらしく、他の現地人スタッフに「本当によかったのなら、誰か他の人に話すよね」などと私に代わって解説してくれました。

次に行ったところでは、何人かがこれを真似て同じように聞き込んでいったのですが、他の人に話したという例にはほとんど出あえなかったようです。Eさんたちは少々がっかりしたものの、これを契機に研修全体のやり方の見直しを始めたそうです。その後は、このことに限らず、これまでにも増して、研修の効果を上げるための工夫を続けているとのことです。

「研修(講義、授業、イベント、映画、コンサートなどなど)は、どうでしたか?」「よかったですか?」と聞くのではなく、「帰り道に誰かとそれについて話をしましたか?」「その後誰かに、例えば家族や友人にそのことを話しましたか?」と聞いていくというのが、インパクトを聞き出すための鉄則です。
答えが「いいえ、特に」だったら、それまでです。

逆に「はい」だったら、「誰にですか」「いつですか」「何をどんな言葉で伝えましたか」「その方は、どんな反応を見せましたか」などなどと具体的に聞き込んでいくことで、その人が何にどんなインパクトを受けたのか、さらには、何をどう伝えれば、その感動や学びをその場にいなかった他者に伝えることができるのか、などなども具体的に学ぶ機会にもなります。

実は私は今週末からまたアフガニスタンでの稲作技術普及プロジェクトの研修のために、イランに行くのですが、次回の研修のテーマのひとつが「農民から農民への普及(farmer to farmer extension)」なのです。そこでは、上記のような質問術を伝えながら、「技術研修に参加した農民が他の農民にも思わず話したくなるような研修とはどんなものだろう」と問いかけていくことになるでしょう。


(中田豊一 ムラのミライ 代表理事)



http://muranomirai.org/trg2016cfindia
講師の技を見て、マネて・・・現場での研修は効果大

2016年8月16日火曜日

もしかして、浮気?

みなさんお待ちかね、クイズで対話型ファシリテーションシリーズ。
今回は「恋人との対話」の場面です。

恋愛に悩みはつきものですよね。
でもその悩み、あなたの思い込みではありませんか?
今回は、ある恋人達を対話型ファシリテーションで「すれ違い」から救いましょう!

最近、恋人であるB男さんから連絡が途絶えている・・・と不安でいっぱいのA子さん。
心の中は
「最近なにか悩んでいる様子だったなぁ。」
「他に好きな子ができたのかな。」
「このまま自然消滅してしまうのかな。」
とネガティブ思考に陥ります。
でもめげてはいけません。
そんな不安を押し殺し事実質問で彼の心をのぞいてみましょう。

<問題>
夜19:00すぎ、A子さんは携帯をとり、B男さんに電話をかけます。
「もしもし。」
B男さんが電話にでました!

さぁ問題です!
B男さんに最初に投げかける言葉は次の3つのうちどれが適切でしょうか。

①「久しぶり!なんで連絡くれなかったの?」

②「久しぶり!最近忙しいの?」

③「久しぶり!今何してたの?」



正解は…………
③の「久しぶり!今何してたの?」でした!

<解説>
①の「久しぶり!なんで連絡くれなかったの?」は乙女なら誰もが心のどこかで思ってしまうもの。
しかし声に出してはいけません。
”なぜ?”と答えを強要されると彼の口から出てくるものは事実ではなく言い訳です。

②の「久しぶり!最近忙しいの?」は一見事実質問にみえますよね。
”なぜ?”と聞いていないし、忙しいか否かはyesかnoで答えられる。
しかし!最近って…いつですか?今日か昨日か、わかりませんよね。
また、何について忙しいと言えばよいのか、どんな状態を「忙しい」というのか、B男さんは困ってしまいます。
そんなB男さんから出てくる言葉は「まぁまぁ」や「ぼちぼち」です。
事実質問する際は”時系列”と”細分化”に注意しましょう!

③の「久しぶり!今何してたの?」という質問をされると、B男さんは考えることなく、受話器をとる前の行動を思い出します。
この事実質問を最近元気がなく連絡をくれなかったB男さんが悩みの根源をみつけたり、きっかけや原因を思い出してもらうためのエントリーポイント(対話の導入部)にし、どんどん時系列をさかのぼっていきましょう。

B男さん:「もしもし。」
A子さん:「久しぶり!今何してたの?」

この続きは次回に致しましょう!






(ムラのミライ インターン 三谷遥来)



★迷ってしまった方、間違ってしまった方はブログの過去の記事や書籍で復習しましょう!

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「対話型ファシリテーションの手ほどき」 (700円+税 2015年12月発行)

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メタファシリテーション基礎講座

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2016年8月9日火曜日

メタファシリテーション体験記 おすすめセミナーの効果@我が家

「ムラのミライ」インターンとして活動し始めた私、三谷は先日、7月18日に行われたメタファシリテーション基礎講座に初めて参加させて頂きました。
当日の参加者は私を含めて4名。他の受講者の方々は以前に参加経験があるということで、初心者の私は何度も先輩方に助けて頂きました。
初めての参加だったのでとても不安でしたがセミナー中は終始和やか。私の不安は「ムラのミライ」オフィスの扉を開けた瞬間に飛んでいってしまいました。

午前中は先生からの説明からスタート。午後は練習、練習、繰り返し練習。
ファシリテーターは身の回りにあるものから休日の過ごし方、改めたい習慣など、様々なシチュエーションの中から「事実」だけを引き出していきます。
質問される側は、その時の状況を思い出し質問に答えていきます。すると脳内でどんどん発生してくる言葉、”そういえば”。
「そういえば最近こんなことあったな。」
「そういえば最近あんなもの買ったな。」
「そういえば最近ネットでこんなこと検索したな。」
質問されなければ思い出しもしなかった状況から事実が出てくる出てくる!その場ではモヤモヤしていたことも帰宅後入浴中に 「はっ!」 と、時間差でやってきた事実もありました。その気付いた事実に潜む解決の糸口。人から言われるのではなく、自分で気付くからこそ自分で変化を起こせるのだというメタファシリテーションという手法の素晴らしさを基礎講座で体感することができました。

セミナーでは上手く事実質問ができなかった私。何事も上達には練習が必要不可欠!ということで早速、練習してみようとまず身近な自分自身と母に使用してみることにしました。
我が家の永遠の悩み、それはずばり「服の断捨離ができない!」
季節や流行の流れと共に増え続けてきた服を目の前にして
「最近いつ着たかな?」
「何処に着ていったっけな?」
「その前はいつ着た?」
「何処で買ったっけ?」などと、問いかけていきました。
すると、一年以上着ていない服や、以前に購入した同系色で似た様な服の存在が明らかに!
逆に捨てようと考えていたけども以前は頻繁に会議で着ていたことを思い出し、フォーマル用にとっておこうとクローゼットの前列に昇格した幸運な服もいました。
またこのプチ・メタファシリテーションで整理整頓ができたことに加えて、喧嘩がなくなりました。以前は私が「もう捨てたらー?」と提案していたので母が導き出した答えではありませんでした。
となると、後々必ず出てくる厄介な「捨てなければよかった」問題。我が家でこの問題をめぐる論争は夕飯に響くほど深刻です。しかし今現在この論争が起こっていません!
今回は家庭内という小規模な問題でしたが、大きな規模、例えば国際協力や経営の場で似たような問題を解決しようとした場合、メタファシリテーションを使用した結果5S(整理・整頓・掃除・清潔・しつけの5つの頭文字Sを集めた経営管理法)に結びつき問題が改善した!なんてことになるかもしれません!

メタファシリテーションは私のようなささいな家族問題から社会問題まで、ありとあらゆるシチュエーションに応用できるものだと感じました。私もまだまだ初心者。上達に向けて身近な問題をテーマにして練習していこうと思います。


(ムラのミライ インターン 三谷遥来)






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2016年7月26日火曜日

過去を知ることで、考えはじめる未来 地域でのインタビューの先にあるスキルとは?

ムラのミライ初の沖縄・久高島でのフィールド研修では、講師の和田が島のオバァに短い時間でしたがお話を聞くことができました。

翌日のクラスルーム・セッション後半では、和田がどういう意図でオバァへの質問を組み立てていたのかをふりかえりましたが、その一部をご紹介します。



挨拶や自己紹介をした後、オバァがつけていた金の指輪について「素敵な指輪をされていますね」というところから始めました。

薬指ではなく中指にはめてらしたのを見て、
「この島にも結婚指輪をする習慣があるのかな?」
と、興味がわいたという和田。
一緒にいたもう一人のオバァもプラチナの指輪をつけていたのを、ちゃんと見てとっていました。

-指輪をするという習慣が昔からこの島にあったのか、それとも、どこかの時点で入ってきたのか。

指輪ひとつを入り口(エントリーポイント)に、色んな視点で仮説を立てることができます。
メタファシリテーションの入門セミナーや基礎講座でも練習する「これは何ですか?」から始まる事実質問の応用編ですね。
これができるようになるために、平素から、ひとつのモノに対して、一瞬にして30くらいの要素について仮説を立てる訓練をしてみましょう。

たとえば、仮に経済圏という要素について仮説を立てるとすると・・・
指輪は明らかに、久高島では作っていない。また、宝石店も見当たらなかった。そうすると、指輪は外部から持ち込まれたモノと推測できます。
久高島を中心として、どれだけの範囲まで経済圏として広がるか。オバァの話から、この輪=経済圏の範囲を広げていくことができます。
もし仮に南城市の○○ショッピングモールで買ったとしたら、○○ショッピングモールができるまではどこで買っていたのか・・・と、聞いていきます。


指輪にも、オバァの人生にも、何にでも歴史があります。
指輪であれば、どこで作られ、どこで売られ、誰が買い・・・(時間軸)。
そして、どちらも、この久高島というコンテキストの中で展開したということ(空間軸)。

ふたつの軸を頭の中に描きながら、
「自分がこのオバァだったら・・・」
と想定すると、聞くことはいくらでも出てきます。

過去が明らかにならない限り、未来を推測することはできません。
過去を聞いていくと、いくつものランドマークが出てきます。

たとえば、買い物袋。(和田は少し前から、常にエコバッグを持ち歩き、買い物袋を極力断るようにしているのですが・・・)買い物袋ひとつとっても、過去、ある時期からスーパーマーケットでプラスチックの買い物袋をくれるようになりました。
これは、一つのランドマークですよね。

「思い出してみると、僕が8歳かそこらの時、母たちが『明日からメートル法になったから、これからは”味噌何グラム”と言って買わないといけないね~気をつけないとね~』・・・という会話をしていた記憶がある。つまりここに、それまでは量り売りだったのが、瓶や袋に詰めた状態で売られるようになったという、もう一つのランドマークがある。(僕らは、こういうランドマークになるできごとを単に「便利になった、進んだ」と表現してしまっているけど・・・)」



すべてのモノから歴史が見えます。

あのオバァへのインタビューを何回も繰り返したり、他の人にも聞いたり・・・としていくと、時間軸×空間軸というジグソーパズルのマス目が大きく・細かく埋まっていきます。
色や陰影のついた画が浮かび上がってきます。

そこまでやって初めて、その先=つまり、未来を考え始めることができるのです。


今回、台風が接近していたために久高島での滞在を短縮してしまい、過去から未来へ、島の方たちと一緒に考える時間を取ることができませんでした。島のあちこちを案内してもらい、お話を聞かせてもらっただけになってしまいました。
次回は台風オフシーズンに訪れて(または台風が来たら数日間は島にとどまれるスケジュールを組んで?)、島の方たちと一緒に、島の歴史地図を歩きたいと思っています。



(宮下和佳 ムラのミライ専務理事/関西事務所)




今年後半~来年の国内外フィールド研修も準備中です

2016年7月12日火曜日

自分なら、どう暮らしを立てる? 地域づくり・地域おこしのファシリテーション第一歩

先週、ムラのミライ初の沖縄でのフィールド研修を開催。研修生6人、講師2人、スタッフ2人の総勢10人で沖縄・久高島を訪れました。


今回は、久高島でのフィールドワーク翌日、クラスルーム・セッションでのやり取りをご紹介します。

会場は、JICA沖縄国際センターの研修室。何とテラスから海が見える(!)ステキなお部屋。
朝9時過ぎからスタートしました。

まず、講師の和田から参加者みんなに質問が投げかけられます。

最初の質問
「フィールドワークで一番心がけないといけないのはナニ?」(長期滞在でなく短期訪問の場合)

参加者が答えたのは・・・
「外部の人間であることの自覚」
「相手との関係性をつくる」
「暮らしを尊重する」
「挨拶/自己紹介」
「目的(何を知りたいのか)をはっきりさせる」

講師からのコメントは・・・
「それらも、もちろん大切だし正解。
自分自身が心がまえとしているのは、自分がその場所にいたら、どう暮らすだろう、ということ。
その土地にはまだ誰も住んでいない、という仮定で”自分ならそこで暮らすためにどうするか””どういう風景を見てどう暮らし始めるか”という事を考える。」

そして、質問その2
「そういう風に考えるとすると、出会った方にどういう聞き方をするだろう?」

それは、”ここに何がありますか”ということ。
つまり、何をもって暮らしを立てているか(いたか)、ということ。
久高島で人が住み始めた時から今まで、どういう暮らしが営まれてきたのか。

これは、メタファシリテーションの基本視点「自分が相手の立場だったら」の応用編ともいえます。

実際に、昨日のフィールドワーク中、講師がこだわって質問していたことは何かというと・・・
・土
・水(どこから手に入れるか)
の2つでした。

たとえば、講師の和田が、島を案内してくださった内間さんに投げかけた質問のひとつ
「地下貯水槽があったことはありますか?」
なかった、との回答でした。
目にした雨水貯水槽は割と新しく(昭和になってから)設置され、使っていたものだが、今は使っていない、と。
今は本島から海底トンネルで水を運び、給水塔でくみ上げて給水している、と。

ここまで聞いていくと、心の中の「自分だったら」目線から、疑問が出てきます。
「じゃあ、ここに暮らし始めた人は、水をどうやっていたんだろう?特に食料生産=農業にかかる水をどうしていたんだろう?そもそも、どうしてこの島を選んで住みついたんだろう?」

はい、時間軸へのとっかかりがが出てきたところで、今回はこのへんで。
次回、オバァへのインタビューを通して、時間軸・空間軸の話をお届けしたいと思います。

(宮下和佳 ムラのミライ専務理事/関西事務所)




インドやネパールでのフィールド研修も参加者募集中です

2016年6月30日木曜日

でこぼこ通信_第24号_「ママ、もう1個ゴミ箱いるんじゃないの?」2016年6月30日発行

でこぼこ通信第24号「ママ、もう1個ゴミ箱いるんじゃないの?」2016年6月30日発行

In 601プロジェクト通信 ネパール「バグマティ川再生 でこぼこ通信」 by master


目次

  1. エコレンジャーを目指すオバチャンたち
  2. ママ、もう1個ゴミ箱いるんじゃないの?
  3. 子は親の鏡~ゴミ分別を続けるコツは、「習慣化」
  4. 行動の伴わない人の言葉に誰が耳を傾ける?

1.エコレンジャーを目指すオバチャンたち

5月30日の朝、和田さん(※1)と一緒に、研修の会場に向かった。事務所から車で20分ほどかけて行く、ナイドール村。ここでは、バグマティ川中上流に住む村の人たちを対象にした「エコレンジャー」育成研修を週に一回開催してきた。

研修では、まず、「川の汚染や路上に廃棄されるゴミといった問題に取り組むために、地域で具体的にどのような行動を起こすべきか?」を参加者自身が考えるような問いかけやグループワークを行った。それを受けて、参加者の大半は、家庭でできるゴミ分別・生ゴミ堆肥づくりや、地域での定期的な清掃活動、また近所の人へと学んだことを伝えるといったアクションも起こし始めている。

今後は、これまでの研修や自分たちで始めた活動を通して学んだことを周りの人へと伝え広げる「エコレンジャー」として、参加者自身が研修を担っていく。今日は、他の参加者やソムニード・ネパールのスタッフ、そして研修講師の和田さんの前で、これから予定している研修のデモンストレーションをする日。

研修の参加者は、ほとんどが女性。学生もいるが、多くが家庭を持つ「オバチャン」。この日は、朝から雨が降りそうな天気だったが、オバチャンたちは、暗くどんよりした空気を吹き飛ばすほどの明るい顔で、「ナマステ~!」と迎えてくれた。

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 2. ママ、もう1個ゴミ箱いるんじゃないの?

勢い溢れるオバチャン参加者のなかでも、私(※2)が特に注目しているのが、マイナ・ディディ。(“ディディ”とは、ネパール語で「お姉さん」の意味。年上の女性に対して“~さん”という丁寧な呼び方をするために使われる。)

研修の内容を熱心にメモに取り、質問に対して常に発言し、グループワークではまとめ役を買って出る、とにかく積極的な参加を見せている。

そんな彼女が、デモンストレーションンのなかでみんなに伝えたエピソードのひとつに、こんなものがあった。

「私には、3歳の息子と6歳の娘がいます。研修に参加し始めてから家でのゴミ分別を始めましたが、娘は、ゴミの種類ごとに別々のゴミ箱に入れる習慣がつきました。息子は、まだ幼くて分別はできませんが、『ゴミをゴミ箱に入れる』ということは身に着けています。」

発表では、さらりと終わらせてしまったこの話。

実は、子どもたちへの影響はこれだけではないということを、私は知っている。というのも、前回の研修の休憩時間中、彼女は嬉しそうにこんなことを語ってくれたからだ。

「研修を受けたあとには、必ず子どもたちに話をするの。ゴミ分別も子どもたちと一緒に始めたのよ。ほら、これがその写真。最初はゴミ箱を3つ置いて、家にあるゴミを全部分別することにしたんだけどね、今では4つに増やしたのよ。だって、しばらくしてから娘にこう言われちゃったんだもの。『ねぇママ、金属ゴミを入れる箱もいるんじゃないの?』ってね。

息子はね、外に一緒に出かけたとき、道端に落ちてるゴミを見て、『ママ、これゴミだよね?ゴミ箱に入れないと!』って言って、拾ってゴミ箱に入れたのよ。」

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3. 子は親の鏡~ゴミ分別を続けるコツは、「習慣化」

このエピソードは、マイナ・ディディについて、2つの事実を物語っていると思う。

1つ目は、もちろん、この研修の目的通り、「(ゴミ分別という)アクションを、他人に伝え広げる」を実行しているということ。

そして2つ目は、口先だけでなく、ゴミ分別を、「習慣化している」ということだ。

私は、彼女の話を聞きながら、ある回の研修の中で和田さんが紹介した「子は親の鏡」という話について思い出していた。

「みなさんは、今では『家でゴミを分別しています』と言っていますね。その行動を続けるためには、習慣化する必要があります。みなさんには、子どもがいますよね。子どもというのは、親の行動を映す『鏡』です。ポイ捨てをしない子は、親の行動を見てそれを身に着けているはずです。もしあなたの子がポイ捨てをしているなら、それはあなたの行動を真似ているからですよ。子どもの行動を観察することで、自分の習慣について振り返ってみてください。」

良くも悪くも、私たちは親や周囲の大人の行動を真似て、自分の習慣を形成していく。

例えば、ゴミ箱のないところで捨てたいものがあるとき、ポケットやカバンに入れて家まで持ち帰ることは、日本人にしてみれば、当たり前のことかもしれない。

ネパールに住んでいると、バスの中で食べたお菓子の空袋を外に「ポイッ」とする人や、歩きながら小さなゴミを道に落とす光景は、珍しくない。それは別に、「ゴミを捨ててやろう」と意図的にポイ捨てしているわけではない。ただ単に、「必要のないものだから手放す」という感覚が当たり前で、無意識のうちに癖になっているのだと思う。

マイナ・ディディの子どもたちが親になる頃には、ネパールでも、「無意識」にゴミをゴミ箱へ入れる人が増え、種類別にゴミを分けて処理することが「当たり前」になるだろうか?

彼女の嬉しそうな顔を見ながら、そんな期待を抱かずにはいられなかった。

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4. 行動の伴わない人の言葉に、誰が耳を傾ける?

さて、発表の後に和田さんがオバチャンたちに念押ししたこと。

「外に出かけるとき、みなさん、必ず携帯を持って出ますね?その時に、買い物で使うためのマイバッグも手に取るのです。行動の伴わない人の言葉は、誰も信じません。もし、誰かがあなたに『ゴミを減らさないといけません』などと説教をたれることがあれば、聞き返せばよいでしょう。『あなたは、マイバッグを持ち歩いていますか?』と。」

そう、口で言うことは誰にだってできる。

でも、カトマンズのゴミ問題を解決するためには、行動が伴わなければ意味がない。

平気な顔でポイ捨てをしているネパールの人だって、(おそらく、当たり前すぎて無意識だからこそ「平気な顔」でしているのだと思うが・・・)聞かれれば、「ポイ捨てはよくない」「ゴミを減らさないといけない」と言うだろう。


しかし、言葉通り実践できている人はいったいどれくらいいるだろうか?

研修のネパール語通訳をしているソムニード・ネパールのウジャールでさえ、和田さんに

「ウジャール、おまえはマイバッグ持ってるか?」と聞かれると、

「持ってます!」と答えながらも・・・、実際には、ヨーグルトを買いに行ったさい、ビニル袋に入れてもらってきていたこともある。

私自身、ネパールで働き始めてから、自分の行動を見直すようになった。

「ネパールで何をしているんですか?」と聞かれるたびに、

「NGOで働いています。私たちの団体は、バグマティ川をきれいにするプロジェクトをしていて、家庭から出る排水やゴミによる環境汚染を食い止めるために、地元の人々の習慣を変えるための研修をしています。」といった答え方をしてきた。

新しい人と出会い、この質問をされるたび、内心“ドキッ”とする。果たして、私自身の生活はどうだろうか?と。

この仕事をしている私は、バグマティ川の汚染を減らすような生活ができているだろうか?生活の中で、少しでもゴミを減らす努力をしているだろうか?

家では、プラスチックのゴミ箱と缶・瓶用のゴミ箱、そして生ゴミ・紙ゴミを分けている。生ゴミ・紙ゴミ以外は、オフィスに持ってきて、オフィスのゴミとまとめてリサイクルに出している。思えば、日本でここまで分別にこだわったことはなかった。そして、自分の生活から出るゴミの量について振り返ることもなかった。

今、日本の生活を振り返ったとき目に浮かぶのは、様々な包装紙やプラスチック包みですぐにいっぱいになる、自分の部屋のゴミ箱。そして、何を買うにしても、過剰に包装のされた商品の並ぶ店。

日本では、道端や川にゴミ山ができている光景を目にすることはほとんどないが、かといって、ゴミがネパールより少ないわけではない。大量に排出されているゴミを燃やすだけの燃料とお金が、ネパールよりもあるというだけのこと。

 

6月3日、日本に戻った私は、八百屋さんで野菜を買った。

スーパーではなく八百屋さんを選んだ大きな理由は、個包装されていない野菜を買う選択肢があると思ったからだ。あいにく、すでにパッケージされている野菜も一部あったが、それでも、スーパーで買い物するよりかはゴミを減らすことができた。

消費者としてのこの行動は、とても些細なものかもしれない。

でも、「口だけではなく、実際にアクションを起こし、それを継続する」というのが、私が研修でオバチャンたちと一緒に学んだこと。小さなことだろうと確実に行動を積み重ねる。それなしにはネパールのオバチャンやその子どもたちに顔向けできない。

「他にも、私にできること・私がすべきことは何だろう?」と、オバチャンたちの表情を思い浮かべながら考えるのだった。

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注意書き


※1 和田さん:ムラのミライスタッフ(そして設立者)和田信明。

デモンストレーション研修について鋭いコメントを入れつつも、ジェスチャーや声のトーンで参加者を笑わすことを忘れない。すっかりオバチャンたちの心をつかみ、研修の最後の集合写真タイムでは、個別の写真撮影もねだられることに・・・。


※2 私:筆者、ムラのミライスタッフ近藤美沙子。

ネパール人にも日本人にも「ネパール人に見えるね~」と言われつつも、ネパール語の習得は遅く、オバチャンたちとのやり取りは簡単なネパール語or英語。ちなみに、マイナ・ディディの子どもたちの話は英語でしてもらった。

2016年6月28日火曜日

「●●じゃない」経験を思い出してみる

10歳の子どもにも80歳のおばあちゃんにもわかるように話す。
これは、ムラのミライ流ファシリテーションの鉄則の一つ。

「この人がわかれば誰でもわかる」というボトムラインを設定し、どう伝えるとよいかを考え、相手に質問を投げかけやり取りをしていくべし、と言い換えればよいでしょうか。
「貧困」「収入向上」といった、小難しいけれど抽象的な専門用語などもってのほか、わかりやすく話せないということは、相手の理解力が足りないのではなくて、伝える側の技量不足という、なんとも厳しい指摘が隠されている鉄則です。

たとえば・・・

*「観察」とは何か?だったら、川の観察を終えたばかりの生徒に「観察に何を使ったか」というやり取りを通じて、道具だけじゃなくて五感も使って音、におい、見えたものを記憶していくことを知ってもらう (でこぼこ通信第8号「マジシャンとファシリテーター」より)
*「地図」「アクションプラン」なら、そこからわかること/わからないことを(ファシリテーターが言うのではなく)村の人たちが考え、リストアップするように…などなど。

相手に体験してもらったり、考えてもらったり、思い出してもらったり…相手の経験に引き付けることが重要なんだと学んできました。
(と、簡単に書いてますが、私やSOMNEED Nepalのスタッフたちは、まだまだサラッとはできないんですよね。)

そして最近、もう一つの方法を学びました。
それが、「●●じゃないってどういうことなのか?」を考えてもらうこと。

5月、日本に一時帰国中に、とあるセミナーでプレゼンテーションをする機会をいただきました。そのプレゼンテーションのテーマの一つが「持続可能な開発」。
でも、「持続可能」ってどういうことを指すのでしょうか?
ともすれば空中戦まっしぐらの話題、どう「10歳の子どもにも80歳のおばあちゃんにもわかるように」話をするか!?
ネパールの村のオバチャンたちや子どもの顔を思い浮かべても、いいアイデアが浮かびません。西宮のオフィスで準備をしながら、うーん、と頭を悩ませていたところ・・・

中田さんから投げかけられたのが、
「身の回りで持続可能じゃないことって?」
という質問でした。

「持続可能性とは?」では空中戦まっしぐら、抽象的なことしか思いつかなくとも、「持続可能じゃないこと」だと、自分の経験や身の回りを振り返れば、案外、地に足の着いた例が思いつくものです。

このときは、セミナーのメイン参加対象が学生であることから、学生時代~現在を振り返って
「持続可能じゃないこと」
を思い出してみました。

それは、返済が必要な奨学金。
卒業し、就職してから返済することで、その返済金は次の奨学生への奨学金に使われる・・・という仕組みですが、最近では卒業後に奨学金を返済できない人が増えているというニュースがたびたび流れていますよね。つまり、今ではその仕組みが持続可能じゃないものになってしまっているでのはないでしょうか。
かくいう私も大学入学から大学院修了までの約6年間にわたって受けていましたので、月々の返済が負担になることが多々あります。

中田さん曰く、これは、和田さんもよく使うやり方なんだそうです。
(まだ、ネパールでは実際のやりとりにお目にかかったことはありませんが・・・)
私も、次、村の人や生徒たちの前で話をする機会があれば、真似して使ってみようと思っています。


(田中十紀恵 ムラのミライ 海外事業・研修事業コーディネーター/ネパール事務所)

http://muranomirai.org/trg2016bgnepal