2017年1月10日火曜日

コミュニティーが主体“じゃない”ってどういう状態?

国際協力の世界で良く耳にする「住民主体」や「参加型コミュニティー開発」。
しかし「コミュニティーが主体」とはどういう状態でしょうか。
今回はコミュニティーの人々が主体“じゃない”事例も含めて、コミュニティーの成員が主体的な活動となっているかどうかどうか、簡単に見極める方法を「途上国の人々との話し方」から紹介したいと思います。


ところで、このようなことを職業的に訓練しなくとも、果たして検証すべきコミュニティー開発プロジェクトが、コミュニティーの成員の主体的な活動となっているかどうかどうか、簡単に見極める方法がある。
それは、現場を訪れた時、そのプロジェクトを説明するのが、誰かということで分かる。
もし、プロジェクトを外部者が、例えば、政府機関の職員であろうが、NGOのスタッフであろうが、説明を始めれば、そのプロジェクトはまず100%近くの確率で、コミュニティーは「お客さん」であり、「参加型」とは形ばかりで、外部者が仕切るものである。
その場合、コミュニティーの成員に話を聞けば、外部者が語ったのと同じ内容をおうむ返しのように語るだけだ。

反対に、外部者が説明せずコミュニティーの成員に説明を任せれば、たとえそれがどれだけたどたどしいものであろうと、まず間違いなく活動の主体はコミュニティーの成員である。
しかも、そのようなときは、外部者にとって貴重な学習の機会となる。
すなわち、自らのファシリテーションによってコミュニティーの成員が何をどのように理解し、行い、あるいは行おうとしているかが点検できるからである。
中田が、2000年に私とラオスに訪れた際の、JICAのプロジェクトのリーダーが、プロジェクト対象地の農民に話をさせ、自分は黙って聞いていたがゆえにできたことであった。


(2000年に私とラオスに訪れた際)「途上国の人々との話し方」p18の引用
ビエンチャン近くのある農村で、ラオス政府の森林局は、日本政府の援助機関JICA(国際協力機構)の支援を受けて荒廃林の植林を村人といっしょに行っていた。
整地や植林に必要な資材費をJICAが負担する代わりに村人は労働力を提供し、その後も、植えた木の世話と森林の管理を村人の責任で続けていく。
木々がある程度大きくなったら、計画的に伐採して販売する。売り上げの一定部分を政府農林局が取り、残りは村人の収入になるという仕組みだ。
村人はその活動の管理運営のための委員会を作っていた。
和田は、例によって委員長を相手に「いつ植えたのか?」「樹種は何か?」「どんな作業を誰がしたのか?」などを事細かに尋ねていった。
委員長はそれに着実に答えていく。
互いに立ったままで30分近くも細かなやり取りが続き、私がじりじりし始めたころだった。

和田が尋ねた。「この木は何年後に売るのですか?」

委員長「15年から20年後くらいかな」

和田「誰が売るのですか?」

委員長「その頃は自分は老人だろうから、子どもたちだろうな」

和田「誰に売るのですか?」

委員長「えっ、JICAが買ってくれるんじゃなかったの」

この答えがでてきたところで、和田は、委員長に丁寧にお礼を言って、インタビューを打ち切った。周りで聞いていた私たち調査団の面々はもちろんのこと、同行したJICAのプロジェクト専門家やラオス政府の担当職員も委員長の発言に唖然とした。
村人に対しては、この活動の仕組みについて何度も何度も説明し、研修を重ね、着実に理解してもらっていたはずなのに、委員長にしてからが、将来、木材はJICAが販売を手伝ってくれるものだと信じ込んでいることが暴露された。
JICAからすれば、プロジェクトは数年で終わり、その後はラオス森林局がケアを続けるわけで、10年も15年も先のことに責任がもてるはずがない。
仮にできたとしても、そうする筋合いのことではない。
ところが村人は何から何までJICAがやってくれるものだと思っている、つまり強い依存心を持っていたわけだ。


私も随分多くのプロジェクトを見学させてもらったが、残念ながら、「住民参加型」を標榜していて、本当に住民にプロジェクトの説明をさせたのは、政府ODA、NGOの別なく、私の見た限り、このラオスでのJICAの森林プロジェクト以外一件もなかった。
NGOの人間としては、憮然として立ち尽くす、というところがないではない。


要するに、コミュニティーで「コミュニティー開発」をするという局面になると、政府ODAがろうがNGOだろが、同じ土俵で仕事をせざるを得ず、仕事の質の相違だけを問われることになる。
これには、多額の予算を使おうが少額の予算を使おうが、変わりない。
多額だろうが少額だろうが、今までみてきたように、よほど気を付けなければばらまきになる。
そして今のところ、このようなコミュニティー開発の現場レベルの技術で、私の見る限りNGOの方が優れているとはとても言えない状況である。

途上国の人々との話し方」p158~159



関西の大学生である私も学校のレポートでこれらの言葉を乱用していました。
「参加型コミュニティー開発で地域を活性化させよう!」という題材でしたが、まるでスーパーヒーローが村にやってきて、敵をちゃちゃっと倒して帰っていく…
残された村人たちはどう戦えばいいのかわからずまたスーパーヒーローに頼ってしまう。
そんな終わりが見えないプロジェクトを考えてレポートにしていました。
二度とこんな恥ずかしいレポートは書きたくないものです。



(ムラのミライ 関西事務所インターン 三谷遥来




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