2018年3月13日火曜日

セネガルで絶賛勉強中!初めてのメタファシリテーション~~ちょっと聞いてみました① セネガルの雨季~


こんにちは。
菊地です。今回もセネガルよりお届けします。

早速ですが、セネガルには、雨季と乾季の二つの季節があります。

「雨季」は短く、おおよそ7月~9月の3か月間で、それ以外の季節は「乾季」と呼ばれます。
その短い雨季の雨は天からの恵みで、セネガルの農業プロジェクトに参加している農家さんたちも、雨季にはここぞとばかりに農作業に励みます。

さて、そんな雨季ですが、少々困ったこともあります。

ムラのミライが事務所として使わせてもらっている、セネガルのNGOの事務所が、雨季の雨ではかなりの確率で浸水するのです。


雨で氾濫した事務所の外の道路



これは2017年の雨季の時期に遭遇した浸水。1階部分まで浸水したのは少なくとも2回、外の玄関の階段まで水浸しになったことが、4回ほどありました。

観察すると、雨が降ると30分くらいの間にものすごい早さで道路が水浸しになり、雨水が容赦なく事務所前の階段をくだり、また階段を上がって1階部分に浸水してきます。



タオルを使って浸水を食い止めようとする門番

こうなると大変、玄関の扉をタオルなどで塞ごうとしても水の圧力に勝つことが出来ません。外に出るのにもズボンやスカートの裾をまくし上げて膝上まで水に漬かりながら出口へ向かうしかありません。

しかしながら、雨が止むと一気に水がはけるのも事実です。

大変なのは後のお掃除。掃除部さん3人ほどで泥と水を掻き出し、床を元通りにきれいにしなければなりません。
水が引いた後に掃除する掃除婦さん


私にとってはこの一連の出来事はショックで、成すすべはないものなのかと考えておりました。

今回は、そんなメタファシリテーション初心者の私が、見よう見まねにメタファシリテーションもどきを試みた会話を少しご紹介してみます。

私「この建物はいつからここにあるのですか?」

同僚「2005年から。その前は少し離れたところに事務所を借りていたけれど、ベルギーとのパートナーシップで自分たちの建物が持てたので、2005年4月5日、たしか金曜日に引っ越したんだ。ちなみに僕は2002年から働いているから、前の場所も知っているよ。」

私「2005年にはこの辺りには何がありましたか?」
同僚「この辺りは砂地で、周りには2,3軒くらいしか建物はなかったと思うよ。何キロか離れたスタジアムまで見えたんだ。」

私「今はそのスタジアムが見えますか?」
同僚「今は見えなくなったね。建物が増えたから。なにしろ、シテ(集合住宅地区)が隣にできて、高い建物が増えたからね。」

シテの外壁の並び。同じような住宅が並ぶ。

私「このシテはいつできたのですか?」
同僚「たしか2007年から建設が始まったよ。ここはシテ・ドゥ・ゴルフと言うんだけれど、住宅街ができる前はお金持ちの○○さんという人がゴルフ場をもっていたんだ。それを区画して住宅街として売ったんだよ。」

私「住宅街としての建設は2007年に始まったのですね。」
同僚「そうそう、それで風景がずいぶん変わったよ。周りに何もなかった時には夜は真っ暗だったんだけど、今は夜も明るくなったね。」

私「今のようなアスファルトの道路はありましたか?」
同僚「なかったね。それが出来たのはつい最近だよ。2016年だったかな」

私「今日、建物の中に雨水が入ってきて、これが初めてではないと聞きました。2005年の頃には建物に浸水したことはありましたか?
同僚「その頃はないね。道に水たまりはできるけれど、すぐに引いたよ。」

私「一番始めに建物内に浸水したのはいつでしたか?」
同僚「うーん、確か2010年だったかな。雨水はシテの出口から道路に流れ出てくるんだ。シテの反対側の方が、標高が少し高くて、そこから雨水が溜まって、私たちがいる反対側の事務所のほうに出てくるんだよ。」

私「なるほど。最初に浸水した時はどうしましたか。」
同僚「まあ、掃除をしたよね。でもそんなに大変じゃなかったよ。その年はもう1回くらい浸水したかもしれないけれど、そんなに大変ではなかったんだ。」

私「その翌年はどうでしたか?」
同僚「その翌年はなかったかな。あ、でも2013年の雨はすごかったな。量が多かったよ。」

私「なるほど。では、最近こういうことがあったのはいつでしたか?」
同僚「2年前だったと思う。その時は、他の同僚が、雨水がたまっているとは知らずに、普段通りに玄関を出て行ったら、そこで水に漬かってしまって大変そうだったよ。」

私「その時は何かしましたか?」
同僚「門番が、入り口部分を少し高くするためにセメントを盛っていたよ。」

セメントで少し高くした入り口部分

私「その後に雨水が入ってきたことはありますか?」
同僚「少しは和らげられたけれど、その後も雨が入ってきたよ。」

私「その後は何か対策をしましたか?」
同僚「特にしていないよね。」

私「なるほど。」
同僚「浸水の話で思い出したけれど、ゴナスっていう地域知ってる?僕が以前住んでいたところなんだ。そこには大きな池が二つあるんだけれど、僕がすんでいた時にはそこは住宅地だったんだよ。」

私「えっ?・・・いつから池になったんですか?」
同僚「あれは1989年だね。雨がずっと降り続いた時期があってね。」


セネガルの池(写真はイメージ)

私「どのくらいの期間降っていたんですか?いつ降り始めたか覚えていますか?」
同僚「あれはその年の9月だよ。1回に降る時間は短かったけれど、断続的にずっと降っていたよ。1か月は降り続いたね。」

私「その後どうなったんですか?」
同僚「始めのころは、石を積み上げてそのうえで調理をしたりしていたんだけど、1か月後には家が1メートルくらい浸水して住めなくなってね。新学期が始まる10月の始め頃には家を出て、新しい家が見つかるまで近くの学校の空き教室を借りて住んでいたよ。」

私「そんなことがあったんですね。そこに住んでいた人は何世帯くらい引っ越したんですか?」
同僚「それは役所に聞かないと分からないな。」

私「たしかに・・・」

―もう少し聞きたかったのですが、今回は以上。

私の拙い、と言いますか、メタファシリテーションとも言えないような聞き取り調査でしたが、ここで気づいたことはありました。

それは、事務所の浸水は、外部者の私にとっては一大事だったのですが、同僚にとってはそれほど大事でもなさそう、ということでした。

本当に大変な事態だったら、ゴナスの池の時のように、「引っ越す」という選択肢もあり得るということです。

それなのに、出入り口を少し高くしただけで、雨水が入ってくるのに任せているあたり、そこまで一大事でもないのでしょう(お掃除する人は大変そうですが!)。

それを何のかんのと、私が口出しする話でもないのだなと、私が気づいたのでした。

メタファシリテーションでは、相手が自分の事実に気づく作業を手伝うものなのですが、私が気づいてしまうあたり、まったく以ってまだまだだなぁと、改めて思う私なのでした。

私のメタファシリテーション練習はまだまだ続く。

菊地綾乃 ムラのミライ海外事業コーディネーター/セネガル事務所)


★プロジェクトについて
プロジェクト名:地域資源の循環による農村コミュニティ生計向上プロジェクト~農村青年層のための「ファーマーズ・スクール」
JICA草の根技術協力事業(パートナー型)


★セネガルの農家を応援してください!募金キャンペーン実施中
http://muranomirai.org/2017bokin