2018年3月20日火曜日

インタビューのコツ・・・の落とし穴 対話の始まりは、いつから?

2018年2月16日から22日まで、インドの東海岸にある港町、ビシャカパトナム市で、フィールドワーク研修を開催しました。
メタファシリテーションの基本スキルを実地で学ぶ、という趣旨で行い、日本から学生や社会人が併せて5名参加してくれました。
参加条件はただ一つ、事前に日本で2時間の入門セミナーか1日の基礎講座を受けている事。なので、全員が、「メタファシリテーション」という言葉や「事実質問」の基本的なことはすでに承知済みです。
初めて会う人に緊張感を抱かせず、信頼関係を築き始める第一歩として、その人の身に着けているもの等から会話を始める・・という「エントリーポイント」を忠実に実行した参加者たち。

スラムXでは・・
「そのピアス、とてもきれいですね」
「ありがとう」
「どこで買ったのですか?」
「街の中のお店よ」
と会話が始まることもあれば、スラムYでは
「さっき、この家に来る前に、ここから男の子が走っていくのが見えましたが、どなたかのお子さんですか?」
「私の甥っ子よ」
「ここは甥っ子さんの家ですか?」
「私の家よ。彼の父親は出稼ぎで、母親は身体を悪くしているから、私の家で預かっているの」
と会話を始めたこともあった。

そして、例えばスラムXのピアスの続きでは、集まっていた女性たちの配偶者の職業や買い物の範囲などに会話が広がった。スラムYでは、学校、食べ物の話へとつながっていった。




そこまではとてもスムーズにいく。ただ、聞く人それぞれが「エントリーポイント」を実践してしまう。


つまり、Aさんが目の前にある果樹を指さして、「アレは何ですか」と聞いて一通り質問した後、Bさんが「先ほど空の上を飛んでいったもの、あれは何ですか」とAさんの話からぶっつり途切れて聞き始め、そしてCさんは「あなたのサリー、綺麗ね」とまたAさんやBさんの話とはベクトルの違う話を始める。
通訳をしていた私は、敢えて突っ込まずに彼らの質問をそのまま訳していたのだが、集まってくれていたおばちゃんたちも鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、その内、おばちゃんたちから「そんなことよりあなたの事を教えてよ」と逆質問が始まったりする。

そんなスラム訪問を3回ほど続けたある移動時間、一人の参加者が「(自分たちのインタビューが)なんか変」と言ってきた。

そこで、私の方からその参加者に対して聞いてみた。
「エントリーポイントは何の始まりだっけ?・・相手との対話の始まりだよね。じゃあ今回、5人でおばちゃんたちに会った時、いったいいつが「対話の始まり」になるんだろう?」
「・・・そうか、みんなで会うから一番最初の「これは何ですか」がエントリーポイントで、その後、質問する人が誰に変わろうとも、対話はもう進行中なのですよね」
つまり、一人ひとりにとっては「ここからが私の対話だ、始まりだ」だと思っていても、相手(おばちゃんたち)からしてみれば、「ナマステ」とお互いに挨拶して自己紹介をし、誰かがしゃべりだした時点で対話はスタートしている。
訪問先に到着して、この参加者から他の参加者に「エントリーポイント」含め、どのように質問を続けていくかを投げかけたところ、その後の5人とおばちゃんたちとの対話が劇的に変化した。

それまでは、お互いに「ワタシがまだ聞いている」「あなたはまだ質問の番じゃない」と牽制し合っていた参加者たちだが、まるで大縄跳びを飛び続けるチームのように、流れを邪魔することなく対話が続いていった。

振り返りで、ある参加者が言った。
「今までは、『相手の答えに対して次の質問をする』というポイントについて、自分のことだけを考えていました。しかし、他の参加者のやり取りもしっかり聞くことで、次に何を質問したらいいのかがよりクリアになって、今日の対話がとても面白かった」

フィールドワークは、個人ですることもあれば、チームですることもある。
ましてや、立場が違うメンバーが集まってチームワークを行うこともあるだろう。
一対一のインタビュー、一対複数のインタビュー、そして複数対複数のインタビュー。
どの場合でも、相手から本音を引き出し、現状を知るための原理原則は変わらない、それを自分で見つけ出した参加者たちでした。

前川香子 ムラのミライ海外事業チーフ)



読み切り形式でどこからでも読める、メタファシリテーションの入門本。
 




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