2017年7月25日火曜日

青年海外協力隊の現場から~ゴミ今昔物語(前半)

南アジアのとある国で活動する青年海外協力隊の友人Kさんから、宮下和佳さんにメタファシリテーション講座開催とKさんのフィールドを見て欲しい、という相談が来ました。そして和佳さんから「行ってみません~?」と誘われ、行ってみることに。

基礎講座には多くの隊員も参加して、Kさんのフィールドにも5名ほどが参加してきました。一緒に講師として来ていた松浦さんと、「予想以上に熱い意気込みですねぇ」と話しながら、2つのグループに分かれてフィールドを歩きました。

Kさんの活動は「コミュニティ開発」で、啓発活動を取り入れながら、特にゴミ問題に取り組んでいます。地区では、市役所が雇う清掃人の人たちが、決められた場所で決められた時間に掃除したりゴミ収集をしたり、そして市役所の職員がそれら作業を監督します。

市自体は、日本でいうと京都のような古都で、Kさんの担当地区は主要道路に沿って斜面になっている土地にコンクリの家が立ち並び、通路はくねくねと入り乱れ、その地区内に共用シャワーと共用トイレが設置されています。むき出しの排水溝にはビニール袋が無造作に投げ込まれ、道路の隅に捨てられた、やはりビニール袋に入れられた生ごみは、野良犬に漁られていました。

Kさんと彼女の相棒の市役所職員、そして他の隊員たちと計7人くらいで歩いていると、さすが約1年半の間、普段から歩き回っているKさん。次々と住民から声がかかります。「よう、今日は何しに来たんだい?」「ほら、今日も掃除しているよ」という挨拶をしていると、ゴミの分別や収集に非常に熱心だというガネーシュさんと鉢合わせました。

ガネーシュさん、色々とゴミについてまくしたてます。市役所職員も、色々何か言っています。とりあえずお家に行かせてもらうことになりました。
コンクリのお家は2階建てで、入ってすぐがリビングで8畳くらい。テレビやいろんな飾り物があります。壁は綺麗に緑色に塗られていました。部屋の中には、お連れ合いのラクシュミさんと子どもたちが数人いました。プラスチックの椅子が10個近く積み上げられているのを見ると、お家を訪ねてくる人も頻繁にいそうです。
座った後も、ガネーシュさんとラクシュミさんとKさんで、ごみについての話に盛り上がっています。どうやら、各家でビニール袋で集めたゴミも、回収時には中身だけなので、汚れたビニール袋だけが残ってイヤだの、そうしたビニール袋が捨てられているだの云々。

そしてKさんが「他のお家では、ビニール以外にゴミを入れているところはありますか?」という事を聞いている。ガネーシュさん曰く「プラスチックのバケツに入れているところもあるけど、買えるからいいよね」みたいなことを言っているらしい。

そんな問答が数分続き、市役所職員がなにやら説教を始めて一呼吸おいたところで、自己紹介をして話を聞かせてもらうことにしました。(以下の対話は、Kさんがとりまとめてくれたものを使わせてもらっています)



前川(M):お二人とも生まれ育ったのはどこですか?

ガネーシュ(G)・ラクシュミ(L):この地区です。(実際には地区名を言っている)

≪※時系列で聞く:過去から遡ってくるために、まず、彼らがいつからこの地区に住んでいるのかを知る≫

M:この家はいつからここにあるんですか?

G:70年前からです。おじいさんの時代から。

M:へー、ずいぶん前からここに暮らしているんですね!今のこのコンクリの家を建てたのは誰ですか?

G:私です。

M:いつ建てたのですか?

G:20年くらい前です。

≪※見た感じそれほど古くないと思われた上、祖父の代から住んでいるというので、いつ建てられたのかを確認=これ以降の会話に繋がる≫

M:前の家の材質は何でしたか?

G:土でできていました。

M:土だったんですね!屋根は何でできていたんですか?

G:トタン屋根です

M:そうですか!土壁にトタン屋根のお家だったんですね。じゃぁその頃、この家の周りの道路はどんな道でしたか?今はコンクリですよね。

G:未舗装の、土の道路でした。

≪※状況の細分化:自分が暮らしていた家を細かく思い出してもらう。同時に、私自身もその家が思い描けるように(=ガネーシュさんが思い出しているのと同じ家を描けるように)聞いていく。土壁だからと言って必ずしも藁やヤシの葉の屋根ではない。だから、屋根の材質も聞く。地区内の様子の内、一番変化の激しい道路についても聞くことによって、当時の地区の様子がより鮮明になる≫

M:そうでしたか。その頃、Gさんにご飯を作ってくれていたのは誰ですか?

G:私の母です。

≪※当時の台所やそれにまつわる記憶を呼び起こす。ご飯を作るのは母親と限らない。祖母や叔母、いとこ、兄弟姉妹かもしれない≫

M:食材はどこから入手していましたか?

G:この街の中のお店で買っていました。

M:誰が買いに行っていましたか?

G:父と私です。

M:Gさんが野菜や果物を買いに行った時、その時お店の人は品物を何に入れて渡してくれましたか?

G:新聞紙や葉っぱに包んでいました。それを家から持参した布のバッグやかごに入れて家まで持ち帰りました。お肉や魚も、そうでした。

M:そうだったんですね!それじゃあ、スパイスは何に入って売られていました?

G:それも新聞に包まれていたなぁ。

M:じゃあ、お米は何に?

G:それも紙の袋だったなぁ。ほらこんな感じの。(家にあった似た材質の紙を指さしながら)

≪※細分化:ごはんづくりに必要な食材カテゴリーを、一つ一つ聞いてみる。スーパーではなく、八百屋、肉屋、魚屋、スパイス屋等々と食材ごとに店がある。それらの買い物体験を思い出してもらう≫

M:なるほどなるほど。じゃあ、そのゴミを地域の中で集める場所はありましたか?

G:今の駅があるあたりに、集める場所としてコンクリの入れ物があって、そこに入れていたよ。私も捨てに行っていた。そこに市役所が回収しに来ていたんだ。

M:そこに持って行く前に、家の中ではどのようにゴミを置いていたのですか?

G:バケツに入れてました。

M:そのバケツの材質は何でしたか?

G:金属です。

≪※細分化:母親が料理をして、そこからゴミ(生ごみや紙類)が発生する→ごみ収集場所に持って行く、という行為で、家から収集場所に持って行くまでに私が相手ならどうするだろう、という視点から、家でのゴミ置き場について聞く。まだプラスチックの類は出てこない、そういう生活をしていたのが見えてくる。≫

M:ほー、そうだったんですね。その当時、大人がゴミ問題について騒いでいるのを聞いたことがありますか?

G:いや、そんなことはなかったなぁ。

M:そうですか。そういえば、今日は朝ごはんを食べましたか?

≪※時系列:プラスチックのゴミが(ほぼ)無かった時の事を思い出しきったところで、今の時点に戻る。ピンポイントで、今日の朝について。この時点で10時半前なので、忘れていることはない≫

L:それが、作ろうと思ったら皆さんが来たから、まだ食べていないの。

M:あれまぁ。それは申し訳ない!

G・L:良いんですよ。話を聞いてくれて、とても嬉しいし。

M:すみませんね。じゃぁ朝起きてから、何か口にしましたか?

G:紅茶を飲んだよ。パンも食べたかな。

M:誰が紅茶を淹れたんですか?

G:私の妻です。

M:奥さんが淹れられたんですね。紅茶をどのように淹れたか教えてもらえますか?

≪※聞く相手は、実際にその行為をした人。この時も、ガネーシュさんが答えようとしたので、敢えてラクシュミさんに聞いた。ガネーシュさんの答えも合っているかもしれないが、もしかしたら「そう思っている」だけかもしれない。≫

L:お湯に茶葉と砂糖とミルクパウダーを入れて、茶こしでこすだけよ。

M:へー、ミルクパウダーを使うんですね。使い終わった茶葉はどうしたのですか?

L:もちろん捨てたのよ。

M:どこに?

L:キッチンのゴミ箱によ。

M:良かったら、キッチンを見させてもらってもいいですか?

≪※観察:実際に、どのようにゴミを入れて置いているのかを見てみる。百聞は一見に如かず。また、聞いた事と実際の行為が合致するかどうか(自分の理解が正しいかどうか)確認する。あるいはクロスチェックする。≫


続きは次回に!(前川香子 ムラのミライ認定トレーナー)



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  対話型ファシリテーションの手ほどき

2017年7月18日火曜日

地域おこし・地域再生に取り組む、その前に~ひとつのモノから、地域にあるもの・あったものを再発見する


わたしが以前、兵庫県内の、とある「限界集落」とされている地域に伺った時のことです。

地域おこしイベントのお手伝いとしてお邪魔した私。
イベント途中、ちょっと時間が空いたな・・・と、会場となっていたコミュニティセンター内をウロウロしていました。
すると、あるお部屋の一角に、高さ15センチから20センチほどの、きれいな木の細工物が置かれてあるのが目に留まりました。
お家の形をしています。

足を止めて見入っていると、地域の方(60代から70代にかけてくらいかな?と思える男性=以下、おっちゃん)が近づいてきてきました。

わたし:こんにちは。これ素敵ですねえ。どなたかが作られたんですか?

おっちゃん:(笑顔)実は私が作ったんですよ

わたし:ええーすごいですね、こんな細かな細工。他にも作られたんですか?

おっちゃん:そうやねえ。いくつも作ったよ

(と、どんなものを作って、誰に贈ったり、どこに飾ったりしているという話をひとしきり聞いたあと)

わたし:(目の前の細工物を指して)これって、何なんですか?お家ですか?

おっちゃん:そうそう、これはねえ、この地域にあった民家の模型なんや

わたし:へえー民家。実際にあった民家がモデルだったんですね。どこらへんにあったお家ですか?

おっちゃん:(地域のどのへんにあった・・・という説明をしたあと)茅葺き屋根の、ええ家やったよ

わたし:茅葺き屋根!きれいですよねえ。そのお家、今もあるんですか?

おっちゃん:今もあるけど、今はもう屋根は茅葺きちがうなあ

わたし:そうですか。どんな屋根なんですか、今は

おっちゃん:洋風の瓦あるやろ、あんなんやなあ

わたし:〇〇さん(おっちゃんの名前)のお家の屋根は、どんなお屋根ですか?

おっちゃん:瓦やな。

わたし:茅葺きだったこともありましたか?

おっちゃん:ああ・・・もうだいぶ前やけどな・・・

わたし:いつ頃まで茅葺きだったか覚えていますか?

おっちゃん:サラリーマンしてた頃にローン組んで建て替えたんやけど、その時に瓦にしたから・・・もう20年以上前やな。茅葺きは、葺き替えるのが大変やからなあ

わたし:葺き替えの作業をしたことはありますか?

おっちゃん:あるで。若い頃やけど

わたし:萱はどこから調達してたんですか?

おっちゃん:昔は川から切ってきてたんやけど、途中から買うようになったなあ

この後、おっちゃん自身が経験した葺き替え作業のことを話してもらいながら、川・水辺の環境が変わってきたことや、共同作業をする機会が減ってきたことが浮かび上がってきたのでした。
おっちゃんは話しながら記憶をたどり、かつてその地域にあった水辺環境や共同作業の仕組み、そしてその変化を思いだし、再発見していったということになります。

「地域の強み・弱みを教えてください」「この地域のいちばん大きな課題は何だと思いますか?」といった問いかけ、「これがない」「あれが足りない」「それが課題」という話題から話を始めるのではなく、「これって何ですか?」から、そこに暮らす人の記憶・経験を呼び覚ます。
地域での最初の一歩を、メタファシリテーション方式で踏み出した会話でした。

地方創生、地域活性化、まちづくり、村おこし・・・様々な活動や調査で、よその地域を訪れる機会のある方も多くいらっしゃると思います。
出迎えてくださった地域の人と、みなさんなら、どのように会話を始めますか?

(宮下和佳 ムラのミライ専務理事)



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2017年7月11日火曜日

残酷なメタファシリテーション

みなさん、はじめまして。京都大学総合生存学館(通称、思修館)の博士課程5年生、横山泰三と申します。私は2016年3月にインドでコミュニティファシリテーター研修に参加して、メタファシリテーションの方法を学びました。もともと「メタファシリテーション」と出会ったのは、私が思修館の1年生のとき、当時にJICAから特任教授としておられた先生から「途上国の人々との話し方」をお薦めいただいたのがきっかけです。その後、中田さんや和田さんのファンとなり、中田さんの著書をむさぼるように読んでいました。

ですので書物を通じてメタファシリテーションのマインドを頭で分かっているつもりでした。しかし実際にそれをインドで実践に移すと、思うように質問が思い浮かばず、農村での対話実践が終わるともうヘトヘトになっていたのを今でも覚えています。

特に印象に残っているのは、ビシャカパトナムのある農村で「いつの間にか継続されなくなってしまったプロジェクト」を抱えるコミュニティとの対話の場面です。もちろん「尻切れチョンボになってしまったそのプロジェクトについて聴きますよ!」というのはその時の目的ではないですし、農村の方々に明言はしません。ただ行きのクルマの中で「そんなことがあった」ということを事前に聴いていただけです。しかし(残酷にも?)当日の事実質問は、いつのまにかそのプロジェクトについて尋ねる展開になっていきました。
その事実質問に及んだときに対話相手だった若い青年が、はにかんで笑いながら「やっぱりキター!」といった何かマズそうな表情をしたのを今でも思い出します。

「事実質問」は生易しいものではなく、どこか残酷さがあります。現在の自分の意識や行動を変える、ということはどこかで現在の意識と行動が否定される自己否定の契機(一度、現在の自分が死んでしまいそうになるような契機)をもたらすものです。そこにメタファシリテーションの高い効果の根底があるように感じています。

私はその後、自分がボランティアで関わっている日本のひきこもり自助グループでの対話、その国内調査、そして思修館の4年次プログラムである「海外武者修行」ではカンボジアでのコミュニティ調査、そして現在、5年次のプロジェクト・ベースド・リサーチではスリランカを含む多くの国でメタファシリテーションを活用しています。そしてその効果や成果を得るたびに、「うん、今日もなかなか残酷だったな」と思うこともしばしばです。

「それはいつから始めましたか?」「誰からそういったことを聴きましたか?」「何をそのとき見ましたか?」といった質問を受けた人は、過去を思い出しつつ質問に答えながらも目まぐるしく感情の変化に襲われているように思います。過去の事実(自分の行為)と現在の自分が思考の内面で対話している、と言ってもいいかと思います。そして「あ、今の自分ってまた同じこと繰り返してる」「前に気づいた過ちを実は今も繰り返してる」といった自分の行動の矛盾、コミュニティの実践の矛盾、プロジェクトの目的と現状の矛盾に次々、ぶち当たっていきます。

政策分析のインタビューでも事情は同じです。何気ない意見の提示に対して、「いつ/どこでそれが分かりましたか?」「その時、相手は何を言いましたか?」といった質問は、根拠となっているはずの事実の客観性を暴いていってしまうのです。気持ちよく自論や哲学を展開している人の足元を、根底から揺るがしてしまいそうな場面もあるのです。

この残酷さを緩和するために、私は自分なりにメタファシリテーションをカスタマイズしました。「事実質問スイッチ」というものを自分に持つようにしたのです。そのスイッチは長くて5分~10分程度でしょうか。まったく無意識な対話の中で、「あ、これを掘り下げて聴かないといけないぞ」という時にこのスイッチを入れて、相手にも「そこ大事なんじゃない?」というメッセージを暗黙に伝えて質問する場面です。
「事実」というものがもっている凄い魔力とエネルギーを、どのように私達がコントロールして活用していくか、まだまだ私の修行は続いています。



(京都大学総合生存学館 博士課程5年生 横山 泰三)



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2017年7月4日火曜日

【クイズ形式】事実質問の超簡単なコツは○○!

みなさん、はじめまして!ムラのミライ関西インターン生の稲垣です。

インターンを始めて早4ヶ月が過ぎようとしています。ですが、スローペースのインターン生活を送る私は、まだまだメタファシリテーションの初心者です。

スタッフさんたちとお昼ご飯を食べるときに、みなさんのご経験を安易に質問しようとして「じゃあ、メタファシリテーションで聞き出してみて!」と振られ、大慌てでノートを見返しています。なんとか事実質問を絞りだそうとしますが、「えーと。うー…。この質問って事実質問になっていますか?」と確認する日々です。

私と同様、みなさんの中にも「事実質問ってむずかしい…」と感じられる方がいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、今回は事実質問をするためのちょっとしたコツを、クイズ形式でお伝えしたいと思います!


【クイズ】あなたの友人Aさんは、体調が悪いようです。

友人A「なんだか最近、寝不足でしんどいなあ…」
あなた「」

 さて!みなさんなら、友人Aさんに何と声をかけますか?
  
選択肢
① 「へ~。なんで寝不足なの?」
② 「そっか。ふだんは何時に寝るの?」
③ 「そうなんだ。昨日は何時に寝たの?」






【解答・解説】答えは…③です!
メタファシリテーションを耳にしたことがある方なら、①はNGワードである「なぜ(Why)」を使っているのでダメだ、と気づかれたのではないでしょうか。「なぜ(Why)」は相手の意見・思い込みを引き出してしまうため、「事実」を訊いたことにならないのです。


問題は②です。事実を訊いているように見えますし、「ふだん」と使うことで、Aさんの生活の全体像を捉えることができそうですね。しかし、実はこの「ふだん」というのもメタファシリテーションではNGワードなのです。

なぜなら、「ふだん」を使った質問から得られる答えは、Aさんが自分の生活に対して抱いている「認識」であって、「事実」ではないからです。②では、Aさんの「認識」が誤っていても、気づくことができません。ですので、問題の本質を見つけるためには③のような質問をする必要があります。

このように、メタファシリテーションでは「ふだん」「よく」「いつも」「ふつう」がトリッキーなNGワードとして挙げられます。


では、③のような事実質問をするコツはなんでしょうか?
それは、「過去形で質問する」ことです。

過去形の質問であれば、「昨日」のように「いつ(When)」が特定されるため、「ふだん」といったNGワードはでてきません。



みなさんも、事実質問に迷ったときは、過去形で質問してみてはいかがでしょうか。これなら、ちょっと意識するだけで実行に移せるのでおすすめです!

これからは、「困ったときは過去形で質問!」とつぶやきながら、スタッフさんとお昼ご飯を食べようと心に決めたインターン生の稲垣でした。


(ムラのミライ 関西事務所インターン 稲垣玲)



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2017年6月27日火曜日

【解説】「自分が好き!」が問題を解決する力になる「対話」って?

前号、息子との対話の中でメタファシリテーションを使った筆者。
一体、どこにメタファシリテーションが発揮されていたのでしょうか?

今週はいよいよ詳しい解説をお伝えします。


***

まず、ここで問題になっているのは次の2つです。
①前号に引き続き「C君にお弁当を食べるのを邪魔される」問題
②「唾やゴミをかけられたお弁当のごはんやおかず半分以上をごみ箱に捨て続けなければならない」問題

ひとまず「私が毎日お弁当を作らなければいけないという問題」「私が作ることが出来るおかずの種類が少ない問題」「味はイマイチかもしれない」という問題は脇に置いておきましょう。上の①と②の問題に対して、私と夫は、息子に対して、2つの「対話型ファシリテーション」スイッチを入れていました。


≪解説その①「立ち位置」というスイッチ≫
対話型ファシリテーションのことを、私は「支援しない支援」とも言っているのですが、それには『支援する側にある人の「立ち位置」が問われていますよ』という意味が込められています。対話型ファシリテーションは、いわゆる「支援する側にある人(親、医療、福祉、教育、NPOに関わる人など)」が、「上から目線」ではなく、働きかける相手との対等な関係を築くことを可能にする技術でもあるのです。

この話の登場人物3人(私、息子、夫)は、上の2つの問題を「困っている人=息子」、「支援する人=親(私・夫)」という捉え方をしていません。3人が自分の問題として「一緒に解決策を探したい」と対話を始めています。3人とも、①②の問題は「自分ごと」として捉えています。

「その問題解決を通じて一体何を達成したいのか?」という働きかける側のゴールがないままに、「相手に気づきを促そう」とか、「支援しなければ」という気持ちでいると、必ず「支援される人」と「支援する人」に分かれてしまい、対等な関係はつくれません。

ご紹介した会話では、問題①も②も3人の問題として解決策を探しています。特に②に関しては、私や夫のほうが「捨てたくない」という気持ちが息子よりも強いのが事実です。「一緒に納得する最善の解決策を探そう、まずは出来ることから」という私と夫の立ち位置は、①の問題に息子だけが1人で立ち向かっているのではない、というメッセージとして息子に自然と伝わります。


≪解説その②「息子の自己肯定感」を高めるスイッチ≫
息子は前回の合気道しかり、今回の小さな容器のお弁当箱しかり、自分で考えた解決策を実行に移しています。相変わらず①の解決策は見つけられていませんが、次善(ベター)の解決策を自分なりに見つけ、それを親が評価しています。また親は、実現に向けた後方支援をし(小さな容器に弁当を詰める、合気道の月謝を払う等)、息子は「自分で考えた」ことを実行しています。

自分で考えたことを実行し、その成果(合気道なら10回に1回はC君のパンチを避けられた、小さな容器にしてゴミ箱に残りご飯やおかずを捨てずに済んだ)も感じています。この繰り返しが生み出すものは?そう、それが「自己肯定感」です。

相手に「自ら気づいて、自ら行動変化を起こす」よう働きかけることができるのが対話型ファシリテーションですが、そのためには、相手に「自分は大切な存在だ」「自分は価値ある存在だ」と信じてもらえるような対話を続ける必要があります。「自分で見つけたことは、使う!」 と言われるように、「自分で見つける」ことで、「自己を肯定するプラスの感情」が問題解決への行動へと人を動かします。

注:「自分で見つけたことは、使う!」=講座では「聞いたことは  ①  、見たことは  ②  、やってみたことは  ③  、   ④    したことは、使う。」というクイズをご紹介しています。(答:①忘れる、②覚えている、③分かる、④発見)

息子を知っている人は、何度も聞かせされる彼の自慢話にうんざりしているかもしれません。自己肯定感が低かった私の子ども時代とは対照的に、彼は自己肯定感が高い子どもに育っています。この自己肯定感が、自ら問題を解決してゆこうという原動力になります。


この彼の高い自己肯定感の秘密は、私と夫による息子への意識的な働き掛けもありますが、それとは別に「インド」というキーワードがあります。

今「自分は(自分の子どもは)自己肯定感が低い」と思っている方も、「インド」に特に関心のない方も、対話を通じて、意外と簡単に自己肯定感は高めてゆくことが出来ます。それでは、次号のお楽しみに。

(原 康子 ムラのミライ認定トレーナー)



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2017年6月20日火曜日

「自分が好き!」が問題を解決する力になる「対話」って?

今回も息子の話なのですが、テーマは「立ち位置」と「自己肯定感」です。
「また子どもの弁当の話か〜」と思われた方、その通りです。
「もう弁当の話はいいや〜」という方は、来週の『解説』から読んでいただくとよいかもしれません。
 
「立ち位置」と「自己肯定感」。最初にお断りしますと、自分の立ち位置を明確にし、かつ相手の自己肯定感を高めるような対話を365日24時間試みていたら疲れてしまいます。私も、この手法の方法論の生みの親である夫も、そんな「対話型ファシリテーション」スイッチをいれたのは、「先週だったか、先々週だったか?」というほどです。

『お母さんもお父さんも、いつも「なんで○○したのっ!」とか「絶対ダメ!」とか、怒るばっかりだよ』と息子が証人となってくれるでしょう。

というわけで、少し前の話になりますが、私と夫が息子に対して、対話型ファシリテーションのスイッチを入れたときのお話をご紹介します。


注:夫=和田信明・中田豊一「途上国の人々との話し方〜国際協力メタファシリテーションの手法〜」みずのわ出版2010年の、和田信明の方が連れ合いです。「対話型ファシリテーションを使って家族の会話は毎日さぞスムーズなことでしょう!」と思われた方がおられたらそれは大間違い。「なんで〜○○できないの?」「○○はどうだった?」「だからいつも○○なんだ!」と講座では皆さんに禁止している「なぜWHY」、「どうHOW」、「いつも・みんなは・毎回」満載の日常会話です。スイッチを入れないときの会話はそんなものです。


***

前号でお伝えした後も、息子が学校のお弁当の時間に、C君に邪魔されて「お弁当をちゃんと食べられない」という問題は続いています。

問題は続いていますが、だからといってお弁当を持って行くのを止めるわけにはいかず、夫が長期で出張中の現在(2017年5月)、毎朝6時に起き、月曜から金曜まで、私が毎日お弁当を作っています。

①栄養、②限られたおかず(私が作れるおかずは少ない)、③予算、④手持ちの食材、などなど総合的に考えなければ作れないのがお弁当です。1度に1つのことをするのも精一杯の私が、事前に①から④まで総合的に考え、段取りをつけておかなければ、朝の1時間でお弁当は作れません。そうやって苦労して作ったお弁当の半分以上が、毎日のように「C君の唾が飛んできた、ゴミを飛ばされた」と、ゴミ箱行きとなっています。

息子なりに精一杯やっているのは分かっています。C君の攻撃を避けられるように始めた合気道は続いていますし、唾が飛んできそうになったらお弁当のふたを素早く閉めたり、C君がトイレに行っている間に素早く食べたり。

料理が苦手な私が毎朝6時に起きて、お弁当や朝ご飯を作り、夕ご飯もがんばって作っていることも分かっている息子は、お弁当が半分以上残っている日は、本当に申し訳なさそうに帰ってきます。

頭では「こんなことで怒っても仕方ない」とわかってはいても、ごはんやおかずをごみ箱に捨てるとき、息子が食べるのを毎日邪魔するC君と、C君をきちんと注意してくれない先生たちに腹が立ってしまいます。

日本で、そして様々な世界で、ご飯を食べられない子どもたちは大勢いるのに、貴重な食べ物を捨てなくてはいけない毎日。せっかく朝6時に起きてがんばって作ったお弁当なのに、という気持ち。

我が家で使っている米と野菜は、どうやったら持続可能な資源の利用をしながら安全な食糧を作ってゆけるかを考えて農業をしている人たちのものを選んで買うようにしています。彼らが大切に育ててくれたありがたい野菜や米を、ゴミ箱に捨てなければならないのも辛い話です。私の気持ちはおかずとご飯の残ったお弁当箱を見る度に、暗くなる一方です。

 

2週間ほど、『朝、お弁当を作る・夕方、中身を半分以上ゴミ箱に捨てる』という日が続きました。「もうこれ以上、お弁当を捨てたくない。」と私が切り出し、夫(スカイプ)と息子と3人で何か解決策はないかと話し合いました。

私「もうお弁当を毎日ゴミ箱に捨てたくない、どうしようか?」
息子「C君に邪魔されないようがんばってるけど、唾とかゴミとか飛ばされたお弁当は家に持って帰っても食べたくないよ。」
夫「合気道の技を使って、避けられるようにはもう少しかかるだろうし、しばらくは仕方ないかな。」

私「捨てるためにおかずを作る、なんてもったいない。せめておにぎりだけ持っていくことにしようか?」
夫「それもいいね、おにぎりなら1個ずつラップに包んでいけば、唾を飛ばされてもラップに入っているから、食べきれなくて残したら家で食べられるね。」
私「ああ、そうしよう。お弁当はおにぎりだけにしよう!」

息子「ええっ、毎日おにぎりだけ?!」
夫「ラップがゴミになるけど、ごはんとおかずを毎回捨てるよりいいね。この際、おかずもラップに包んでいけばいいんじゃない?サンドイッチの時も1つずつラップに包んで持って行けばいいよ。だったら毎日おにぎりじゃないよ」
私(心の声)「え〜、やっぱりおかずも作らないとダメか。毎日おにぎりの中身だけ変えれば楽かな、と思ったのに〜。」

息子「でも、いちいちラップをはがしながら、お弁当を食べるのは面倒くさいよ。ゴミもいっぱいでるよ。」
私「ラップがあればC君に唾やゴミをかけられても、家で食べられるから食べ物は捨てなくて済むよ。」

息子「やっぱり、ごはんもおかずも全部ラップというのはちょっとイヤだな。」
私「ラップのゴミはいっぱいでるけど、ごはんやおかずやパンを捨てるよりましだよ。もうお弁当箱はやめて、ラップで包んでいこうよ。」

息子「ちょっと待って。ボクのお弁当箱って大きいのが1つだよね。その中におかずもご飯も入っているし、サンドイッチもおにぎりも1つのお弁当箱に入れてるよね。だから唾やゴミを飛ばされたら、そのお弁当全部が食べられなくなってるんだよね。だったら、小さなお弁当箱にしたらどうだろう?1つの小さな容器におかずは1つだけ。食べる時に小さな容器を1つだけ開けて、食べ終わったら、次の容器を開ける。そうしたら唾を飛ばされても容器にかかるだけでしょう?邪魔されて食べられなかったら、残して家に帰ってから食べるよ。」

夫&私「それは名案だね!おかずで1つ、おにぎりで1つと、小さな容器に入れていけば、ラップのゴミも出ないね。」


というわけで早速、これまで使っていたお弁当箱を止めて、翌日から小さな容器を3つ持って行った息子。一日目は、完食。翌日はC君に邪魔されて食べられなかった容器はありましたが、唾もゴミもかけられなかったので家で容器を開けて食べていました。相変わらずC君に邪魔されて、お弁当を全部食べられない日は続いていますが、ゴミ箱におかずやご飯を捨てなくてもよくなりました。


***

ここまで、一体どの部分で「対話型ファシリテーション」を利用して会話していのかよくわからないかもしれません。

扇風機の風量「弱・中・強」のうち、「弱」くらいですが「対話型ファシリテーション」スイッチは入っています。


詳しい解説は、来週お伝えします!

(原 康子 ムラのミライ認定トレーナー)




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2017年6月13日火曜日

絶賛勉強中!初めてのメタファシリテーション~目からウロコの基本のき「観察」~

はじめまして。
2017年5月よりムラのミライ セネガル駐在所におります、菊地です。

まず、私は何を隠そう、メタファシリテーション初心者中の初心者です。
書籍『途上国の人々との話し方』は以前から知ってはいましたが、きちんと実践してみたことはありませんでした。

こちらで勤務することになり、いくつかのメタファシリテーション研修に参加させてもらい、ようやくこの手法のおもしろさ、奥深さを実感しているところです。

さて、今回はそんな初心者の私が、メタファシリテーションの生みの親である和田さん、中田さんの近くで見聞きし、これは!と思った「基本のき」を一つご紹介します。

それはセネガルの村での研修中、エントリーポイント(とっかかりの話題)について中田さんに質問したことがきっかけでした。
その時のエントリーポイントは「氾濫、洪水(英語でFlood)」だったわけですが、この研修にはそのエントリーポイントしかなかったのではないかと思わせるような和田さんのファシリテーションでした。

けれど、もし私だったら、果たしてそのエントリーポイントを選べるでしょうか。もしいくつかのエントリーポイントが考えられる場合、何を選んだらいいのでしょうか。それを選ぶことで導かれる対話まで想定しているのでしょうか…。このような疑問について中田さんに尋ねてみました。

「まあちょっと練習してみようか。今いるこの教室だったら、最初に何を聞く?」と、中田さん。
私:「うーん…(決めかねて)相手の話しやすいことですかね。何か相手が自慢できることとか。」
中田さん:「そうだね。相手のセルフエスティームを高めるためにね。それは、この教室だと何だろう?」

教室に積まれた本やDVD

(私の目)教室には、積み重ねられた机や椅子、壊れたテレビとたくさんの本やDVDがある。本類は寄贈品なのか立派に見えるが、砂ぼこりをかぶって無造作に積み重ねられ、いかにも管理がされていないように見える。あとは黒板に授業の板書がしてあるくらい。

私:「本やDVDですかね。」
中田さん:「(首を振りながら)これがセルフエスティームを高めるかね?」
私:「うーん。(高めないよな、と心で考えながら、答えが見つからない)」
中田さん:「じゃあ(ヒント!)この教室で一番最近されたことは何だと思う?」

私:(もう一度よーく見まわしながら)「黒板にある授業ですかね…それとも…壁の修繕?」

教室の壁の修繕跡(左壁の修繕が一番新しく見える)

中田さん:「そうだよ!この壁の修繕は、学校が唯一自主的にやったことが感じられる。僕だったらこれをエントリーポイントに、「いつ」「誰が」「どうやって」というのを聞いていくね。それで学校の体制や保護者との関係などが見えてくると思うよ。」

なるほど!私の目が節穴だったのかと思うくらい、私には中田さんには見えていたものが見えていなかったのです。いえ、見ようとしていなかったのです。

メタファシリテーションでは、そもそも会話を始める以前、エントリーポイントを選ぶ以前の観察こそが、まず大切だということが体験的に実感できた練習でした。これによって私の疑問が答えられたのでした。

しかし、ここには絶対的な方程式はありません。和田さんや中田さんのように研ぎ澄まされた洞察力を養うために、まずは観察眼を鍛えなくては、と胸に刻んだのでした。

(菊地綾乃 ムラのミライ職員/セネガルオフィス)

★プロジェクトについて
プロジェクト名:地域資源の循環による農村コミュニティ生計向上プロジェクト~農村青年層のための「ファーマーズ・スクール」
JICA草の根技術協力事業(パートナー型)

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