2021年11月11日木曜日

「気づかせてやろう」と前のめりにならず、相手の話を聞く

自分が対話相手に勧めたいことを、質問の形で気づかせようとしてしまう。
これは、メタファシリテーションを学び実践し始めた方によくある、つまずきポイントです。

実は私もメタファシリテーションを学び始めた当初は、同じような失敗を繰り返していました。
「この人はわかってないから、事実質問を使って気づかせてやろう!」
こういった意図で事実質問をしても、うまくいった事はありませんでした。

メタファシリテーションは「相手の話を聞く技術」です。

1人では言語化できなかった出来事の1つ1つの過程を、事実質問により思い出させることができ、また聞き手も相手の事実を知ることができます。
この過程があってこそ、対話相手が課題に気づき、解決に向けて動き出すのです。

では、これに関する事例を紹介させてもらいます。


シチュエーション:ある製造業の人事部の部長と部下のAさんとの会話。

対話事例1

部長:明日の1 on 1面談会議の資料は作った?
Aさん:今作成中ですが、見ていただけますか?
部長:(資料をチェックし、追加して欲しい内容がある。直接指示するより、事実質問で気づかせてみよう・・・)過去の面談実績について、資料に入れるよう誰かに指示されたことある?
Aさん:いや、されたことはないです。
部長:じゃあ面談方法の補足資料を入れるように誰かに指示されたことある?
Aさん:いや、それもないです・・・・両方追加しておきます!

→部長の質問は事実質問であるものの、話を聞く質問ではなく、Aさんは「指示された」と感じているかも。

対話事例 2

部長:明日の1 on 1面談についての会議の資料は作った?
Aさん:今作成中ですが、見ていただけますか?
部長:(資料を見る)・・・いつから作成し始めたの?
Aさん:昨日夕方、課長に指示をされた後に作成し始め、明日までに仕上げる予定で した。
部長:要点がまとまっていて、とても見やすい構成だね!資料作成にあたり、テンプレートを何か使ったのであれば教えてもらえる?
Aさん:はい、異動前にいた営業部で使用していたテンプレートを使いました。
部長:今度他のみんなにも共有しといて。ちなみに、人事部で使用しているテンプレートがあるのは知っている?
Aさん:はい、課長から4つほど共有していただきました。
部長:4つもある事、知らなかった(笑) 4つの違いは課長から説明はされたの?
Aさん:社外用と社内用の会議資料用テンプレートです。
部長:そういうことね!社内用のは使ったことある?
Aさん:はい、今月の月例会議の際に使いましたが、その時は先月にBさんが作成した月例会議資料を元に作成しました。
部長:じゃあ、今回の1on1面談会議の以前の資料は読んだ事はある?
Aさん:まだなかったので、同期のZ君に見せてもらうようメールをしたところです。それを見て資料を仕上げるので、またチェックしてください!

→ 資料を作成する過程を思い出す質問をすることで、Aさんの事をより知ることができた。また、余計なアドバイスをしなくても済んだ。


繰り返しになりますが、メタファシリテーションは聞く技術です。
実践練習をする際、まずは事例2のように相手の話を聞く事実質問を心がける事をオススメします。

松浦史典 ムラのミライ認定トレーナー) 


関連講座

「新卒が1年で辞める理由がわからない…」 悩める人事部のためのメタファシリテーション

 


2021年9月24日金曜日

「聞く」ことは、職場の人間関係を良くする方法

製造業で働く浅井さん(仮名)は、3年ほど前に講座を受講されて以来、メタファシリテーションを使い職場で良好な人間関係の構築に取り組んでおり、その成果やインパクトについて定期的に進捗報告をしてくれています。

「納期に追われ、みんなが病んでいき、職場に活気もなくやばいんです!」

浅井さんが講座を受講時に話してくれた職場の問題です。

 

具体的には、

      トップダウンの社風が根強い

     職場改善をしようと集まって意見を出し合うものの、その場しのぎの意見ばかりで、会議が終わったあとのアクションに繋がらない

     部下を思って提案をするものの、響いてないみたい

 

課長である浅井さんは上司とのやりとりにも苦労しつつ、部下とのやりとりにも悩んでいました。
浅井さんいわく、部下には仕事の指示は明確に伝え、ミスした時は「なぜミスをしたのか」をしっかり問いただすことで同じミスをしないように指導してきたと。
部下と良好な関係を作るために、雑談をしようとするも、あたりさわりのない会話で終わり、本音で話してくれているのかわからないともおっしゃっていました。

 

では受講前と受講後で、浅井さんの質問がどのように変わったのでしょうか。

 

シチュエーション:昨日納期であったが、まだ納品していない部下の渡辺さんとの会話

Before

浅井:まだ納品してなかったの?

渡辺:はい、すみません。

浅井:なんで遅れたの?

渡辺:B社とのプロジェクトに関する業務で忙しく、納品先のA社は比較的納期に寛容なので後回しにしています。

浅井:なんで後回しにするの?納期守るのは当たり前でしょ!?A社も大事な取引先だから、先方が大丈夫っていっても約束は守らなきゃだめだよ!

渡辺:はい、気をつけます・・・・

 

After

浅井:昨日の作業は朝から何してた?

渡辺:8時に出社後、B社との打ち合わせのあとに、見積書作成などしていたら15時くらいになってしまって。16時納期指定のA社に納品するパーツのチェックをしていたところ、破損箇所が見つかって。

浅井:その後どうしたの?

渡辺:A社の担当者の松田さんに電話して事情を説明したところ、ちょうど在庫を保管する場所がないから、来週月曜日納品でも良いと言われました。

浅井:そうか、それならよかった。最近オンラインでの打ち合わせが増えたけど、松田さんに最後に会ったのっていつ?

渡辺:先月末の31日です。実は、松田さんとはオンラインでの打ち合わせは行っていないんです。回数は減らしても、会って話したいと。会って話すと雑談することもできて、先日会った時に、こんな話もしていたんです。」

 

浅井さんは失敗を重ねながらこのようなやりとりを続け、少しずつコツをつかんでいったようです。
結果、部下から話に来てくれたり、仕事の提案をしてくれることも増えたようです。
関係性が良くなるだけではなく、それによってお互いモヤモヤしとした気持ちを抱えず仕事が効率的にできてきたとおっしゃっていました。

浅井さんが自らのコミュニケーション方法を見直し、気づいたことを教えてくれました。

「今までは相手の話を聞いているようで、聞いてなかった。相手の状況を聞くことが、”言い訳”だとおもっていたけど、実は違った。事実を聞くことで、自分が知らないこともたくさんあったし、相手が課題整理できるのだと気づいた。」 

 

松浦史典 ムラのミライ認定トレーナー)

 

 

海外の活動地での筆者

 

2021年9月13日月曜日

国を問わず、業種も問わず

2011年12月、海外研修で初めてムラのミライのインドでの事業地を訪れた時の話。
まずは座学にてメタファシリテーション(以下メタファシ)の手法を学び、3つくらいの村に
て事実質問の練習をすることで体感することができた。
それと同時に、シンプルな事実質問で構成する対話手法は理解できたものの、簡単に習得できるスキルではないことも実感した。(村人に事実質問をする際、どんだけ振り絞っても質問が2個くらいしかでてこなかった・・・・・)

研修も終わりに差し掛かった時、当時働いていた企業でも、村でおこっていることと類似し
たコミュニケーションの問題があることに気づいた。そして、この手法は国際協力のみなら
ず企業でも使える手法だ!と思ったことを覚えている。

インド研修の最後に集合写真をパチリ

それから実践練習と勉強を重ね、2015年にメタファシリテーション体験セミナーにて講師デビュー。
その当時、参加者の8割程度はNPOなどのソーシャルセクターの人であった。
だんだんと参加者層も変わっていき、企業で勤める人の割合も高くなってきた。業種や国
などが違っても、多くの人がコミュニケーション、対人関係の問題を抱えていることがわか
った。

ある時、講座に参加していただいた某企業の人事部で働くAさんが職場の悩みを話してく
れた。
「離職する社員が多くて・・・・ 社員の悩みや職場での問題をヒアリングするのですが何
が問題なのかわからないんです」

詳しく話を聞くと、次のような事実を知ることができた
●人事部の役割の1つ:社員の問題を把握し解決する。そして離職率を下げる
●新入社員には、入社3ヶ月後に面談をおこなっており、何か問題がないか?困った
ことはないか?などの質問をしている
●面談の目的は、上記の「離職率を下げる」為に新入社員の抱える問題を早めに察知
し解決に導くこと
●ヒアリング内容は人事評価に影響しないことは社員に伝えてある

まさにメタファシが使えるシチュエーション!と思い、このような具体的な相談によって、企業のどのような場面で使えるのかが見えてきた。

その後もAさんのような相談が増え、それにフィードバックを続けることで小さいな成功
事例もでてくるようになってきた。
その1つに、職場で部下との関係に悩んでいたが改善することができたというBさんがこ
のように話してくれた。
「今まで相手の話をきいているようで、自分の考えを押し付けたり、相手の話を何も聞いて
なかったことに気づきました」
課題の当事者に解決方法を気づかせる対話手法であるメタファシだが、まずは相手の話をし
っかりと聞くことが大事である。

10年前、メタファシは企業でも使える!というざっくりした思いから始まり、企業(主には
人事関係)での課題を把握し、現場でメタファシが有効であると証明される成功事例もうま
れた。
国際協力の現場で生まれたこの手法は、国内でも福祉、子育て、医療など様々な現場で有効
的に使われるようになり、今後企業でも広まっていくだろう。

松浦史典 ムラのミライ認定トレーナー)

2021年4月27日火曜日

「ちゃんと」薬はまいたのに・・・

とある国の農業局職員と農家の会話です。
農業局職員は、新しい害虫忌避剤を普及させるための研修を農家に対して実施しましたが、農家からまだ虫が出ると知らせが入りました。
そこで、きちんと薬剤を散布しているのかどうか、確認するための質問を試みます。

役人 こんにちは。この前、唐辛子について私が指導した有機殺虫剤は撒きましたか?
農家 撒きましたよ。
役人 原材料は何を使いましたか?
農家 いわれた通りに(詳細は言わず)。
役人 30倍の水で薄めて、と研修で伝えましたが、その通りにしましたか?
農家 しました。
役人 効きましたか?
農家 効いたところもあるけど、まだ虫は出るね。なんで完全に効かないんだろう?
役人 ちゃんと葉っぱの後ろまで撒いておいてくださいね。

このような農家とのやり取りでは、「研修で指導したようにやっているようだけどなあ・・・」とあやふやな感じのまま、最後は職員からの指導で終わる会話になってしまっています。
そこで、メタファシリテーションのセオリーに従って聞いてみると、次のようになります。

役人 こんにちは。今日もインゲンがまた一段と成長していますね。立派ですね。
農家 はい、脇芽の摘心もやってるので、蔓の伸びがすごいんです。
役人 唐辛子の個所を見てもいいですか?。
農家 はい。(移動して)この前、教えてもらった有機殺虫剤は撒きましたよ。でもまだ虫がつくんです。
役人 そうですか。最後に撒いたのはいつでしたか?
農家 今朝です。
役人 薬剤は何から作りましたか?
農家 教わった通りに(詳細を言う)。
役人 何の道具を使いましたか?見せてもらってもいいですか?。
農家 これです(小さな手桶)。これのここまで原液を入れました(指で指しながら)。
役人 なるほど、ちょっとペットボトルで容量を量ってみましょう。だいたい100ミリリットルですね。これを水と混ぜたんですよね?何を使いましたか?
農家 これです(噴射器)。これの半分まで水を入れました。
役人 5リットルの容量の内2.5リットルですね。0.1リットルの原液に2.5リットルの水。この前、私がどれくらいに薄めるか言ったことを覚えていますか?
農家 何か違ったかな。よく覚えていないな。もう一回教えてくれ。
役人 手桶のここまで原液を入れたら、この噴射器の半分より少し多いくらい、水を混ぜてください。原液の30倍です。
農家 なるほど。
役人 撒いた時は、どのように噴射しましたか?
農家 (葉っぱの上に噴射器の先を向けて)こうやって・・・。
役人 葉っぱの後ろに虫を見たことはありますか?
農家 あるよ。・・・そうか、葉っぱの後ろも撒かないといけないな。

前の会話に比べて、農家の反応が随分と違うようになりますね。
まず最初に、良いところを見つけて農家の自己肯定感を高めています。
そして、量を確かめる際には、何グラム・何ミリリットルという単位を極力使わずに、実際に使った道具を目で確かめます。
実際に使った道具を見せてもらうことで、単なる「手桶」「噴射器」等の言葉から想像する大きさではなく、同じものを見ながら実際の量を確認できるのです。
これも一つの共通認識を持つ、ということです。

また、具体的に聞くということは、農家の人に散布した時のことを再現してもらうということです。
そうすることで、何が足りなかったのかを自分で見つけることができ、最後の「葉っぱの後ろにも撒く」という言葉を農家自身が言えるようになるのです。

(前川香子 ムラのミライ 海外事業チーフ)

 


 

2021年3月17日水曜日

「生きづらさ」の、外に出る

生きづらいという言葉がここ数年、メディアで良く聞かれます。
背景には色々とあるでしょうが、私はその原因の一つに、なんでも二極化して判断する社会の構図があると思っています。儲かるか儲からないか、好きか嫌いか、男か女か、若いかそうでないか、勝ち組か負け組か。
そうやって決めてしまった方が、敵味方が明確で戦いやすいし、何より、それ以外の色んなことを考えなくていい。その波にうまく乗れず、半ば諦観していた私に「おまけ組」の存在を示してくれたのが本著です。


20歳を過ぎてくらいから徐々に、世の中の理不尽や自分の現状への不満みたいなものと戦うよりも諦観する方向に気が向き始めていました。
小さい頃からクラスのグループやらヒエラルキーやらに順応できなかったり、高偏差値主義の高校生活についていけなかったり。大学に入れば、SDGsの授業でジェンダーについて討論した後に「それでも生む機能があるのなら使ってほしい」と言ってくる男子学生。家では、毎日見聞きする「家事を手伝ってますよ」レベルから深まらないジェンダー論議。就活では、今や新卒は神話と言われて中途で受けるも職歴や専門性で他と劣ると言われ、若いから新卒へと言われて行くと大卒と比べ若くないと言われ。
そうやって波に上手く乗れないでいると、いくら自分に信念があっても、ずっと揺らがず立ち続ける事は簡単なことではありません。就職エージェントに相談しても、私のことを聞こうとも理解しようともせず、「○○と○○のどっちかしかない」、もしくは「早くどちらかになれないなんてヤバくない?」と感じさせてくるのはなぜ?人はもっとグラデーションで、その度合いを見ようとしなくちゃ互いの存在を認めあえないのではないか。
ちょっと熱くなりました、すみません。本当は○○組とかはなくて、あるのはあなたと私という存在なんだ。おばちゃん信金で語られる「おまけ組」は、ずっとモヤモヤを抱えて、おかしいと感じることに対して立ち続けることを投げ捨てようとしていた私に、それを言語化して、もう一度自分を肯定する勇気を与えてくれました。


私はインドに縁もゆかりもなく、行ったこともないのですが、きっと日本社会よりも過酷な社会の仕組みの一番下の方で生活しているおばちゃん達が、原さん達との対話の中で、少しずつ自分たちの存在を肯定し、力を付けて、勝ち組でも負け組でもない、自分達の存在を勝ち取っていく姿は清々しいもので、こちらの気持ちまでさわやかになりました。
また、長らく経済的に苦しい環境に加え、外から持ち込まれた貧困の指標や支援のものさしで良いように計られてしまってきたがために培ってしまった“生きる術”を持つおばちゃん達に対して、その術を当然のことだと肯定し、常におばちゃん達と事実を確認しながら、おばちゃん達の可能性を見守っていた原さん達の我慢から、何が誠実なのかを考えました。
原さん達が指示をするわけでも提案をするわけでもないのにおばちゃん達が信金を設立して運営しているのは、それが、おばちゃん達が必要だと思うおばちゃん達の物だからです。そんな当たり前のことなんだけれども、社会のあらゆる関係性や構造の中で忘れ去られてしまうことを、既存の開発支援の定説や制約の中でも貫こうとする原さん達の姿勢に、また頑張ってみようというエネルギーをもらえました。

本書の内容とは別に、原さんの語り口や伝え方にも心の温かみや勇気をもらえる人は多いと思います。まず、途上国での支援という一見壮大で難しいテーマですが、ニュースの討論コーナーで専門家が話しているような専門用語とか理論解説などはほぼ出てこず、終始、原さん達とおばちゃん達による無声映画に原さんが活弁しているという感じで、途上国支援に馴染みのない人にも楽しめます。
そんな調子で、大学院で学んだ原さんが理論武装をしたまま現場を求め、たくさんの失敗をしたことをベースに話が語られていきます。失敗した自分を下げすぎず、開き直るわけでもなく、失敗からの改善を高らかに誇示するでもない。おばちゃん達の会話が、便宜上、岐阜弁で語られていることも、このおばちゃん達が良い人達とも悪い人達とも映らない、身近な人達の会話のように迫ってくるものがあります。そのような伝え方だからこそ、国際協力や開発をやろうとして前のめりになっている人には、じわじわと身につまされる思いがしてきて、結果として自分を振り返る機会を与えてくれます。そして、自分がどのくらい前のめりになっているかどうかを確認できるでしょう。
もちろん、支援に対しては、様々な立場での様々な考え方はあるでしょうが、自分がどう受益者の人達と関わっているのかを振り返る指標には成り得ます。そうして、いつでも帰ってきたくなるバイブルになっていくことと思います。私にとってもそのような作品になっています。
私はこの全体としてバランスの良い伝え方がとても好きなので、いつか自分もこのように伝えられる人になりたいと思います。

(田中沙知 メタファシリテーション講座修了生)

 

 

2021年3月8日月曜日

獣害対策地域リーダーの役割って?モヤモヤを事実質問で整理

ある日の某NPOオフィス。スタッフのAさんは、インターンのBさんから相談を受けていました。
Bさんは今度、ある自治体に「獣害対策地域リーダー」として赴任する予定です。先日、配属先の役場に研修に行ってきたのですが、どうもそれ以来、自分がこれから果たすべき役割についてモヤモヤし始めているので、話を聞いてほしいということでした。

【Aさんの心の声:「リーダーの役割について、部署内の共通認識がないのでは?検証してみよう】
A:(役場の中で)最初に「リーダーが必要で、こういう仕事をしてもらいたい」と話してくれたのは誰?
B:主任です。住民と町の橋渡しをしてほしいと言われました。
A:他に同じことを言われた人はいる?
B:はい。係長です。説明会の時に言われました。あまりにきれいなことを言われたので、どこかの言葉をそのまま言っているのかな?って思いました。
A:そうか~。他にも同じことを言っている人っていた?
B:聞いたのはその二人です。課長には言われませんでした。
A:なるほど、その二人から他に聞いた話はある?
B:はい。主任が「去年は雪が少なくてイノシシの被害が多かったけど、今年は雪が多いから、イノシシの数が減って被害も減ってくれるといい」と言っていました。その時、「イノシシの被害が減ったら、私の仕事なくなっちゃうのかな?」って思いました。
A:なるほど。

【Aさんの心の声:どうやら、モヤモヤの原因は部署の共通認識以前にもあるかも。よし、では方向転換して・・・】
A:主任からイノシシの被害をどうやって把握しているか、 聞いたことある?
B:はい。猟友会の人が巡回していて、住民の人から聞いたり、巡回中に見つけたら報告してもらっていると言っていました。
A:住民から直接役場に報告する仕組みがあるか聞いた?
B:聞いてないですが、見せてもらった報告は猟友会からだけでした。
【Aさんの心の声:あれ、もしかして役場は被害状況を把握できていないのでは?】
A:サルの被害もあるんだっけ?
B:はい。サルの被害は一部の人が騒いでいるだけだと言っていました。
A:主任はその人と直接話をしたか聞いた?
B:してないと言っていました。役場にも直接話が来たわけではなく、知り合いを介して「こういう情報がある」って伝わってきただけです。
A:そうか~。
B:はい。その知り合いの人が「電気柵を張ったらいいよ」とアドバイスしたら、その人が「そういうことじゃない、一度見に来て話を聞いてほしい」と言っていた・・・と言っていたそうです。
A:で、その後、役場は話を聞きに行ったかどうか聞いた?
B:行ったとは聞いていないです。
A:そうか~。サルの被害はその人だけなのかな?
B:町内全体にサルは出没していて、猟友会が巡回してると言っていました。
A:なるほど。猟友会の人が巡回始めたのって、いつからだっけ?
B:去年の8月からです。
A:そっか~、去年からか~。
B:はい・・・。
A:その前はどうやって、把握していたんだろうね?
B:わからないです・・・。おととしはほとんど被害がなかったといっていました。
A:うん。おととしはほとんど被害なかったのね・・・。
B:はい・・・。
A:(沈黙)
B:(少ししてから)・・・何も把握していないってことなんですね!把握していないから、リーダーの役割もイメージできていないんですね。
研修では事務仕事しかしていないから、被害がなかったら事務員みたいになるんじゃないかと、心配でした。私いらないんじゃないかな?って思っていたんです。
私が入ったら、まず最初に、町に被害情報が上がってくる仕組みを作ろうと思います!
モヤモヤが晴れました!

具体的な被害状況が把握できていない、ということを一つひとつ確認し、Bさんがそれを咀嚼するのを待ったAさん。その結果、Bさんは、まず被害状況を把握する、という大事な仕事の第一歩を自ら発見することができました。
そこに自分自身の役割を見出すことができて、モチベーションが上がったBさん。これからの活動が楽しみです。

(宮下和佳 ムラのミライ 専務理事

 

写真はインドのおサルさん
(本文とは無関係です)


 

2020年12月4日金曜日

「管理が大変」の中身を分解してみたら・・・

私が活動するNPO法人おーでらすでは、人も自然も「イキイキ」と暮らせる地域を目ざす活動の一環として、鳥獣害の防止とコントロールの支援に取り組んでいます。
2019年に講座に参加して以降、活動現場にメタファシリテーションを取り入れています。
 


先日、一人の農家さんに「電気柵の管理が大変だからワイヤーメッシュを入れたい」と言われ、その設置指導を行ったのちの様子を聞きに行きました。
ワイヤーメッシュでは田んぼ全体を囲むことができなかったので、他のところは電気柵を設置すると言っていたのですが、できていませんでした。


そこで、もしかしたら年間の農作業のスケジュール管理もできていないのかもしれない・・・と思い、年間を通しての作付け品目や面積、作業にかかる日数、手伝ってもらっている人手、その人の賃金など、事実質問を使って聞いてみました。

すると・・・「こんなに作業があるの?!」とびっくりしました。


この状態で電気柵の設置・管理は無理だということがわかりました。

ご本人も無理なのはうすうすわかっていて、最終的には、機械で除草作業ができるところを電気柵で守り、機械が入れない所をワイヤーメッシュに切り替えていく方向で話がまとまりました。


さらに、ワイヤーメッシュや電気柵を設置する時期も「この時がいい!」というのがわかり、作業を効率的に行えるイメージができました。


改めて、私自身も「メタファシリテーションを使った時の効能はこういうことか~」と実感した瞬間でした。
まだまだ、引き際がわからずしゃべりすぎてしまう部分もありますが、少しずつ身について来ているようで、うれしくなりました。

 

今野万里子 (特活)おーでらす 代表理事)

 

柵の設置作業をしたときの様子。