2018年6月12日火曜日

途上国の子どもたちが学校に行けない 「貧困」ではない理由

ムラのミライで三度にわたって開かれている、私たちインターン生に、ビジネスマナー等を教えていただくインターンシップ研修の時間の中で、ムラのミライ代表理事の中田さんに、メタファシリテーションの講座を開いていただいています。今回は、中田さんの過去の実話に基づくという、「バングラデシュの農村でのスクールプロジェクト」のケーススタディを詳しく解説していただいた際のお話を書きたいと思います。



ケーススタディの内容は、バングラデシュの農村で、子どもたちの家に通学状況の聞き取り調査に行った話で、インターン生三人それぞれ問題点を分析し、事前にメールでお送りしていました。

メタファシリテーションを学んだことのある方ならご存知の通り、子どもたちが学校に行けない本当の理由(事実)を聞くためには、相手の考えや言い訳を引き出してしまう「なぜ」は決して使ってはいけません。スタッフは、「なぜ学校に行かないのか」と聞く代わりにどう聞けばよかったのかを、インターン生同士で話し合いました。
「今日は学校に行きましたか?」「今週は何日間学校に行きましたか?」など、まず子どもたちの通学状況を聞くための質問を、私たちは考えました。

しかし、中田さんは、
「お子さんは今どこにいますか?」と聞いたといいます。

私たちは、事実を聞いているつもりで、実は、子どもは学校に行っていないのではないか、(学校に行くのが当たり前だ)という思い込み、学校を前提とした仮説を、既に質問に含めてしまっていたのです。それに対して、「今どこ?」という質問は、最も基本的な事実を聞くものでした。

母:「羊を連れて、野原で草を食べさせています。」
中田さん:「誰がそうしろと言ったのですか?」
母:「夫です。」

次に中田さんは、「誰が」指示したか、という大事な要素を聞きました。「誰が」を聞くことは、今まで知り得なかった新しい情報の存在を知るためにとても大切な質問です。

次に、なぜご主人が子どもに羊を連れて野原に行けと言ったのかと頭によぎっても、そう聞いてはいけません。相手からの答えを「待つ」のです。
中田さん:「そうですか、ご主人がそう言ったのですね。」

それ以上中田さんは何も言わず、母親からの言葉を待ちました。
母:「私たちの村はイスラム教の信仰、保守的な考えが強く、女の子が学校に行くことに賛成でない男性がとても多く、夫もそうなのです。」

これが、「なぜ」と尋ねたときには知ることができなかった答えでした。母親に「なぜ」と聞くことは、母親の考えを聞くことで、事実とはいえません。子どもたちが今「どこ」にいて、「何」をしていて、「誰の」指示なのか、事実から得る情報でなければ、何が必要なのかは見えてきません。

中田さんの解説を聞いた後、私は、事実質問をしているつもりでも、自分の仮説を含めてしまっていたことに気付きました。

また、事実質問をして状況が少しずつ明らかになっていく中で、気づき、本当の事実を述べるのは、話し手自身です。
私は、今までを振り返って、相手の気づきを待たず自分の考えを言ってしまうことが何度あっただろうと思いました。私の視点もアドバイスも、一つの参考にはなっても、結局はその人自身の気付きでなければ何もその人の行動には変化は起きません。自分が言いたいから、というだけでは、相手の本音も本気も引き出せないんだと、強く思いました。

知らず知らずのうちの思い込みに気付きを与えてくれる、ムラのミライの環境に本当に感謝です!

(笠見友香 ムラのミライ インターン)

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